熱中症予防に向けた療法士の取り組み

訪問リハのこと

健康あってのリハビリテーション

一年を通して、訪問看護ステーションの売り上げが少なくなる季節は、夏と冬に二分されています。そのうち、夏場に利用者さんが少なくなる理由は〝体調不良による入院〟が大半をしめています。

夏に調子を崩してしまう原因は主に〝熱中症〟です。特に今年は新型コロナウイルスの流行も相まって、マスク着用による熱中症のリスクも高くなっています。

そんな熱中症のリスクから利用者さんの命を守るために、訪問リハビリの機会をうまく活用してみてはどうでしょうか。

高齢者ほど熱中症になりやすい理由

熱中症の予防には〝水分補給〟と〝空調設定〟の二本柱で対応できます。

では、予防方法が明確になっているのに、なぜ高齢者ほど熱中症になりやいのでしょうか。一番の原因は〝感覚機能の低下〟です。

喉の渇きや暑さを自覚しにくいことが原因であれば、それを自覚してもらえれば話は早いのですが、そうひと筋縄では行きません。

高齢者が水を飲まない理由

高齢者が喉の渇きが自覚しづらいこととは別に、水分を飲みたくない理由があります。

喉が渇く前に水を飲んでくださいねーと伝えても、水分補給をしない方がいます。その一番の理由は〝トイレが近くなる〟からです。

動作能力の低下や介助を要している方の場合は、トイレに行く機会を極力減らそうとする傾向が見られるため、わかっていても水分補給には消極的になってしまいます。

エアコンをつけない理由

現在のように冷暖房や除湿、送風といった機能が搭載されたエアコンが一般家庭に普及し始めたのは、昭和末期といわれています。

それほど馴染みがないエアコンをしっかりと使いこなせる高齢者は、思った以上に少ないように感じます。慣れないものは使い熟すことはできません。

実際に在宅でエアコンを利用を促してみると、リモコンの操作がままならず、暖房設定や18度の極寒設定になっていたりします。

また、これまでエアコンを使わずに乗り切ってきたという自負から、扇風機と気合で暑さを乗り切ろうとする方もいます。根性論で乗り切れればよいのですが、最近の夏の暑さは容赦ありません。

経口補水飲料の正しい飲み方

熱中症には経口補水飲料が一番適していると言われますが、使用場面をしっかりと見極める必要があります。

まれに予防の段階から経口補水飲料を進める方がいますが、経口補水飲料が効果を発揮するのは〝脱水症状〟にある時です。脱水傾向にある方が経口補水飲料を飲むと、いつもよりおいしく感じるという目安もあるようです。

熱中症や脱水症状の予防では、スポーツ飲料やカフェインの入っていない飲料であれば特に問題はありません。

訪問時にやっておくこと

実際に訪問リハビリの際、療法士ができる熱中症対策はシンプルです。

ひとつは目の前で飲水を確認することです。〝水飲んでくださいね〟と伝えて帰っても、実際に飲んでくれる方は少ないです。

若干しつこい感じもしますが、しっかりと目の前で飲水場面に立ち会うことが大切です。

二つ目はエアコンを利用してもらうことです。エアコンの利用を渋る利用者さんには、こちらが暑いのでつけてもらいたいとお願いするとスムーズです。

また、リハビリ終了後もエアコンのスイッチを切らず、そのままの設定で退室しましょう。

どちらも荒々しい仕業に思えますが、事前に家族やケアマネジャーと連携を図っておくことで、一転して命を守る大事な行いに変わります。

まとめ

夏場の熱中症リスクを減らすためには、

① 目の前で水を飲む場面を確認するまで声かけをする。

② エアコン利用を渋る方には、自分が暑い体でエアコンを利用してもらう。

③ 家族やケアマネジャーと連携を図り、訪問時の役割を決めておく。

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