病院でやっていたことを在宅でも
私が勤務していたリハビ病院では、回復期病棟とともに一般病棟も併設されており、いわゆる〝維持期〟の患者さんも多く入院されていました。
そのため、病状によっては自身で起き上がることが難しい患者さんもいたため、気分転換を兼ねて車椅子で散歩に出かける機会を設けていました。
標準型車椅子の利用が困難な方でも、リクライニング機能やティルト機能がついた車椅子を利用すればリハ室や中庭まで移動することができます。
リハビリの機会を利用して車椅子乗車を試みる場面は、訪問リハビリでも同様です。特に利用者さんのご家族から〝病院と同じように車椅子に乗ってもらいたい〟という意向も聞かれます。
そこで今回は、訪問リハビリで行うティルト・リクライニング機能がついた車椅子導入〟を実施する時の注意点についてまとめてみました。
なお、リクライニング機能のみの車椅子利用はあまりおすすめできないので注意が必要です。
介助量とマンパワーの評価
はじめにしっかりと把握しておくポイントは〝介助量〟と〝マンパワー〟です。これはどちらも車椅子乗車を実施するために欠かせない評価項目だと思います。
ご自身で身体を動かすことが難しい利用者さんが車椅子に移乗するためには、当然ですがそれなりの介助量を要することになります。
経験を積んだセラピストであれば一人で行える移乗の介助でも、実際にご家族が実施することを想定した評価が必要になります。
また〝訪問リハビリの時間〟だけ車椅子に移乗できればよいということではなく、日常的に家族の介助力だけで行えるのか評価しておく必要があります。
病院のように毎日介入できるわけではないため、家族のマンパワーが足りない場合には無理に車椅子を導入しないほうがよいと思います。
動線と収納スペースが確保できるか
次に評価しておくポイントは〝動線〟と〝収納スペース〟です。病院で車椅子を利用する際にはあまり意識をしていない部分ですが、在宅ではしっかりと評価しておく必要があります。
まず動線については、車椅子に乗って玄関を出て散歩に出かける場合、上がり框の高さ、車椅子を転回できるだけの広さを確保しておく必要があります。
たとえ数センチの段差や数段の階段があるだけでも、標準型の車椅子よりも重いティルト・リクライニング車椅子では介助の難易度が格段に高くなってしまいます。
また、ティルトやリクライニング機能がついた車椅子は、標準型車椅子に比べてサイズが大きく、折りたたみができないものがほとんどです。
日常的に使用するものであればそれほど邪魔には感じませんが、気分転換に使用するだけの車椅子では、場所をとって置いてあるだけでもストレスになります。
物置部屋や部屋の隅に置いておくことができればよいのですが、廊下や寝室にあるとどうしても家族の動線上に入ってしまうため注意が必要です。
天井だけを眺める日々では
入院中の患者さんからよく聞く話ですが〝毎日同じ天井を眺めている〟ことはかなりストレスが溜まるといいます。
在宅でも同様にいくら自宅で生活しているといっても、寝室から移動する機会がないという環境は決してよいものではありません。
車椅子に移乗してリビングやベランダ、可能であれば屋外へと行くことができるだけでも、利用者さんのQOL向上に大きく貢献することができます。
実現までの道のりは簡単ではありませんが、ティルト・リクライニング機能のついた車椅子を導入できる環境を目指した介入は必要不可欠な視点なのかも知れません。
まとめ
在宅でティルト・リクライニング機能がついた車椅子を導入する際は、
⑴車椅子に移乗するために必要なマンパワーがあるか確認をする。
⑵車椅子を収納できる場所、屋外へ移動できる動線があるか確認する。
⑶車椅子乗車することで生活の質は格段に高くなるのでできるだけ尽力する。
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