利用者と家族の間
訪問リハビリで自宅に伺っていると、利用者さんと家族でリハビリに対する意向が異なっている場面に遭遇することがあります。これは、訪問リハビリに出ているセラピストの方であれば一度は経験があることではないでしょうか。
私が遭遇した事例ですが、利用者さんとしては〝リハビリを頑張って自宅のお風呂で入浴できるようになりたい〟と希望されているのに対し、ご家族としては〝安全を考えれば家では入浴してほしくない〟という意向が強く、リハビリ中は入浴動作練習はやらないように言われてしまったことがありました。
ちなみに、リフォームしたばかりの自慢のお風呂なんだそうです。こんな時、セラピストはどのように立ち振る舞えばよいのでしょうか。
利用者さんの意向を尊重した場合
セラピストの視点でみれば、当然ですがひとつでも自分できることが増えるようリハビリを行うというのが至極真っ当な考え方だと思います。
では、家族の意向を無視して利用者さんが希望してるリハビリ内容を提供していけばいいのかというと、そう上手くいかないのが訪問リハビリのやりがいを感じる部分です。セラピストの視点でみれば、当然ですがひとつでも自分できることが増えるようリハビリを行うというのが自然な考え方だと思います。
しかし、家族の意向を無視して利用者さんが希望してるリハビリ内容を提供していけばいいのかというと、そう上手くいかないのが訪問リハビリのやりがいを感じる部分です。
利用者さんの意向に沿った内容でリハビリを進めていると、家族としては〝このセラピストには任せられない〟という判断をされてしまい、担当変更や最悪の場合は訪問リハビリを終了されてしまう可能性もあります。
利用者さんの生活を見守っているのはご家族です。そのご家族が望まないリハビリを続けるという選択肢は賢明とはいえないようです。
セラピストが一番ジレンマを感じる瞬間
このようなケース以外にも〝ひとりで歩いてしまうと怖いから体力や筋力をつける練習は控えめにしてもらいたい〟という要望や、〝歩行器を使えれば歩けるけれど、家の中では車いすを使用したい〟という選択を希望されるご家族もいるのも確かです。
そんな場面に遭遇すると、セラピストとしての無力さを痛感させられます。リハビリを頑張りたいという利用者さんを前にして、何もすることができない状況は本当にモヤモヤした気分になります。それでも利用者さんがやりたいといっている以上、何としてでも実施したいとうのが本音です。
なかには逆のパターンで利用者さん自身があまりリハビリをしたくないというケースもありますが、ご家族がリハビリに協力的な様子であれば、おのずとリハビリの内容も前向きになっていきます。
利用者さんと家族の意向をうまくコーディネートしていく
こんな時、私は利用者さんが希望するリハビリをご家族には内緒でこっそり実施するようにしています。前例で挙げた入浴希望の利用者さんに対しても、ご家族には内緒で入浴動作練習を実施していました。
結果的に入浴自体は見守りで行えるようになったため、その経過をお伝えしてみたところ入浴介助サービスを利用することで希望通り自宅のお風呂に入るという目標を達成することができました。
このように、利用者さんと家族でリハビリに対する意向が異なる場合、まずは〝ポジティブな目標を持っている方に合わせてみる〟ということが大切だと思います。
結果的にどちらかの意向に偏った形で落ち着くかも知れませんが、ひと通りリハビリを実施したうえで、改めて両者の意向をもう一度擦り合わせてみる作業はやっておいて損はないと思います。
まとめ
利用者さんと家族の意向が異なっていた場合は
⑴まずはポジティブな目標に合わせて実施してみる
⑵利用者さんの在宅生活を支えているのは家族だということも忘れずに
⑶両者の意見をコーディネートして改めて落としどころを模索してみる
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