訪問リハビリ特有の距離感
訪問リハビリの分野で仕事をするようになってから思うことのひとつに〝利用者さんとの適切な距離感で接することの難しさ〟があります。
病院に勤務をしていた頃はリハビリ室であれば他の患者さんやセラピストなど大勢の人がいるため、お互いの存在感というはそこまで意識をすることなく過ごすことができます。
一方、訪問リハビリでは利用者さんとセラピストの二人しかいない環境のため、いやが応にもお互いの存在感を強く感じてしまいます。そのため、良くも悪くも適切な距離感がわかりにくくなってしまう場合が多いように思います。
そういう意味では〝利用者さんと適切な関係を築く〟という作業は、訪問リハビリのほうが難しく感じるのではないでしょうか。
親切心が仇となってしまったケース
訪問リハビリの特性上、利用者さんのお宅にお邪魔している立場ではどうしても下手に出ざるを得ないケースが存在します。利用者さんとの関係性に優劣が生じてしまうと、それだけで対等にリハビリを実施することもできなくなってしまいます。
私が遭遇したケースでは、リハビリの終了時に利用者さんから〝ゴミ捨て〟を依頼されたことがありました。はじめは小さいサイズのビニール袋だったので会社に持ち帰って処分をしていました。
そんな依頼が習慣化していくと、次第にゴミの量が増えはじめ1ヶ月後には自転車の前カゴに入りきらないサイズのゴミ袋を渡されるようになってしまいました。
ここまでの事態を想定していなかった私は、思い切ってゴミ捨ての依頼を断ることにしました。すると翌週から利用者さんは居留守を使って会ってくれません。
後にケアマネジャーさん経由で事務所に連絡が入り〝もう来なくていい〟と立腹されていたという連絡と共にサービスが終了してしまいました。
この出来事から得た教訓は〝リハビリに関係ない依頼は極力断ること〟です。私自身が利用者さんに気に入ってもらおうとサービス精神を旺盛にしてしまったことが原因の出来事だったと反省しています。
これから出来ないこと、訪問リハビリとして行う必要がないことについてはしっかりと〝ノー〟と言える適切な関係を築いていくことが重要だと気付きました。
家族が担当者を指名してきたケース
訪問リハビリで出会う利用者さんの中には、まれに担当スタッフをとても気に入ってくださる方がいらっしゃます。適切な距離で気にってもらう分には問題ないのですが、中には思いがエスカレートしてしまい大きなトラブルに発展してしまうこともあります。
私が以前勤務をしていた訪問看護ステーションでは、看護師さんがこのような出来事に巻き込まれてしまいました。
看護師さんが女性の利用者さん宅へ訪問に行っていました。そこのご家庭はご主人が介護をしており、いつも同席しながら環境でサービスを提供していました。
担当看護師さんが休みの日、別の若い看護師さんが変わりに訪問することになったのですが、ここでトラブルが発生していきます。
若い看護師さんをとても気に入ったご主人が、担当を若い看護師に変更するよう会社に電話を入れてきたのです。担当の看護師さんに不備があれば対応も検討できたとは思いますが、話を聞いている分にはそのような主張は含まれていませんでした。
結局、利用者さんのご主人が〝気に入った看護師と話をしたい〟という一方的な思いからこのようなトラブルへと発展してしまいました。最後は役所の担当窓口に相談をして、今後は別のステーションを利用してもらうことになりました。
このようなケースは未然に避けようとしても難しいところがあります。訪問をするまではどんな人柄をしているのかはわかりません。インテイク時は焦ることなく冷静に対応していくことが大切のようです。
まとめ
利用者さんと適切な距離を保つには
⑴病院とは違いお互いの存在感が強くなっていることを自覚する。
⑵〝できること〟と〝できないこと〟を明確にしてサービス精神旺盛に対応しない。
⑶一度歪んでしまった関係性を元に戻すのはとても大変。
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