園芸活動の魅力
私は作業療法士の資格を持っていますので、リハビリに〝園芸活動〟を取り入れることがよくあります。
もともと趣味で園芸をやっていた利用者さんはもとより、はじめて挑戦する方でも、比較的容易に導入できるアクティビティのひとつではないかと考えています。
〝園芸療法〟という表現をすると少し敷居が高い感じになってしまいますが、実施するのに特別な資格は必要なく、作業療法士に限らず誰でも提供できるのもメリットのひとつではないでしょうか。
教科書や文献には園芸に関する詳細な内容も記されていますが、特別難しいことはありません。
自分がどのような目的をもって、どんな効果が期待できるかを明確にして取り組み、利用者さんも楽しみながら実施できればそれだけで十分だと思います。
私自身も、訪問リハビリで園芸を取り入れた利用差さんが多くいらっしゃいます。そのなかで特に印象に残っている事例を少しご紹介します。
園芸活動の活用方法
園芸活動を行う一番のメリットは〝簡単で失敗することが少ない〟ことだと思います。手工芸と違って作業行程の難易度も関係なく、土と種を用意するだけで楽しむことができます。
また、ベッド上から見える位置に鉢植えを置いておくだけで利用者さんが身体を起こして観察するようになったり、水をあげるために離床する機会が増える方も大勢いらっしゃいます。
さらに二次的な作業活動にも活用することができます。野菜類であれば収穫をして食べる楽しみがあること、花などの観賞用であれば絵を描いたり押し花を作成できるなど、〝観るだけの活動〟から〝創作活動〟へ発展させることができます。
なぜ在宅で園芸なのか
病院や施設では、数多くのスタッフが熱心に声をかけてくれたり、同じ病室にいる患者さんが話し相手になってくれていたり、意外と対人交流の機会が多い環境といえます。
一方、自宅に退院をしてくると家族の方以外に人と会う機会は激減してしまいます。また、長年連れ添った家族同士、そこまで会話が弾むこともなく孤独感を感じる方は多くいらっしゃいます。
なかにはリハビリで週に一回会って話をする時間が、一週間のなかで唯一の楽しみだという方もいるほどです。
そんな環境の中で、植物のちょっとした変化を気に掛けてみたり、夫婦間の会話や共通の楽しみとしての役割を担う園芸活動は、自宅で生活をしている利用者さんにとって大切な刺激になっていると思います。
園芸を導入した結果活動範囲が拡大した事例
百姓を仕事としてやっていた利用者さんのお宅に訪問する機会がありました、日中のあ活動量が少なくベッド上で過ごす時間が多い生活をされており〝毎日退屈だ〟というのが口癖となっていましたので、園芸活動を提案し取り組んでみることになりました。
自宅にプランターと土、肥料は十分にあったのでそれを拝借して、種はホームセンターで購入したものを使用しました。初めての挑戦なので成長が早い二十日大根の仲間のラディッシュという赤かぶを植えることにしまいた。200円も掛からずに購入できます。
しばらくして発芽してくると、それからは毎日のように庭先に出るようになり、水を上げたり新芽を間引きする作業を欠かさず行ってくれるようになりました。
約一カ月ほどで収穫することができ、それをご家族が浅漬けにして食べるところまで実施することができました。
今回の出来事をきっかけに少しずつ庭先に出向く機会が増え、庭いじりを再開されるに至るまで活動範囲が広がるようになりました。
まとめ
在宅で行う園芸活動の魅力は
⑴準備が簡単で失敗することも少なく実施することができる。
⑵植物の成長を楽しみながら自然と会話や活動する機会が増える。
⑶料理をしたり、絵画や押し花など二次的な作業活動へ発展させることができる。
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