【GAF】〝身体的な制約〟を含めない評価の具体例

訪問リハのこと

GAF尺度の評価において、「身体的または環境的な制約」による機能障害をスコアに含めないというルールは、利用者の精神症状や精神的な機能レベルを正確に測定するために極めて重要となってきます。そこで今回は、精神科訪問看護の評価に欠かせない〝GAF〟を正確に評価するためのポイントについてご紹介します。

正確な評価のためのポイント

身体的な制約を除外して評価する際に気をつけること

  • 「心理的・社会的・職業的機能」のみに焦点を当てる: GAFはあくまで精神機能の指標であり、ADL(日常生活動作)の自立度そのものを測る指標ではないことを念頭に置きます。
  • 原因を特定する: 「できないこと」があったとき、その原因が**「精神症状(幻覚、妄想、抑うつ、不安、意欲の欠如など)」によるものなのか、それとも「身体的疾患(骨折、麻痺、痛み、感染症など)」**によるものなのかを明確に区別します。
  • 「もし身体的な障害がなかったら?」と仮定する: その利用者に身体的なハンディキャップがなかったと想定したときに、どのような精神状態で、どのような対人関係を築けているかを考えることが、適切なスコアリングの助けになります。

脊髄損傷による「寝たきり」の状態(スコア:75点)

この事例は、身体的な制約がいかにGAFスコアから除外されるべきかを最も明確に示しています。

状況

脊髄損傷のため自宅で寝たきりの生活を送っています。身体的には著しい外出制限があり、自力での移動は困難です。しかし、精神面では、後遺症の痛みによる悲観的な傾向はあるものの、希死念慮はなく、家族や介護スタッフとの人間関係は良好に保たれています。

評価の判断

「外出ができない」「寝たきりである」という事実は、一見すると機能レベルが著しく低い(20点〜30点台など)ように見えます。しかし、その原因は精神症状(引きこもりや意欲減退など)ではなく、脊髄損傷という身体疾患にあります。

GAF尺度は「精神的健康と病気」という連続体の中で評価するツールであるため、この身体的な要因による活動制限は評価から除外します。

結果として、精神症状である「痛みによる悲観的傾向(軽度)」と、良好な「対人関係(機能レベル)」に基づき、75点という比較的高いスコアが付けられます。

一時的な身体疾患(風邪)による欠勤

日常生活で頻繁に起こりうる状況も、GAF評価の対象外となる代表例です。

状況

普段は休まず仕事に行けている利用者が、風邪を引いて発熱し、会社を数日間欠勤している場合です。

評価の判断

「仕事を休んでいる(職業的機能の低下)」という事実がありますが、その原因は精神疾患ではなく身体的な制約(風邪)です。

この場合、風邪による欠勤はGAFスコアを下げる要因にはなりません。その人が風邪を引いていない時の本来の精神的・社会的機能を評価します。

片麻痺などの後遺症がある場合

脳血管障害の後遺症などで体に麻痺があるケースも、慎重な切り分けが必要です。

状況

片麻痺のために行動範囲が狭くなっている利用者の場合です。

評価の判断

行動範囲が狭い理由が、純粋に「足が動かない(身体的麻痺)」ことによるものであれば、その不自由さはスコアに反映させません。

もし、身体的な麻痺があることで「自信を失い、うつ状態になって外に出たくなくなった」という精神症状が合併している場合は、その「うつ状態」による意欲減退や社会機能の低下については評価の対象となります。

正確な評価のための判断プロセス

実務において判断に迷った際は、以下の思考プロセスを辿ることが推奨されます。

ステップ判断のポイント
原因の特定「できないこと」の原因は精神症状(幻覚・妄想・抑うつ等)か、それとも身体疾患か?
仮定の置き換え「もしこの身体的な障害がなかったとしたら、この人はどう機能しているか?」と仮定して考える。
精神症状の抽出身体的な不自由さから派生した心理的苦痛(悲観的傾向など)がある場合は、その「心理面」のみを評価に反映させる。

まとめ

「身体的または環境的な制約」による機能障害をスコアに含めないという原則を徹底しないと、身体障害を持つ利用者が一律に「機能が低い」と誤認され、精神症状の改善や悪化を正しく追跡できなくなる恐れがあります。GAFを「多職種間の共通言語」として機能させるためには、ADL(日常生活動作)の評価と、GAFが示す精神的機能の評価を混同しないことが重要となります。

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