リハビリの成果がよい結果を招くとは限らない
私が訪問リハビリの分野で仕事をするようになってから、様々な利用者さんとお会いする機会がありました。一人暮らしをしている利用者さんもいますが、高齢になればなるほど同居している家族の存在が際立ってきます。
訪問リハビリの利用開始時には利用者さんのキャラクターだけでなく、家族の人柄や関係性についても情報を入手しておくようにしています。また、家族が抱くリハビリに対するイメージや練習内容の要望などについても細かく確認しています。
たとえ充実した内容のリハビリを提供できたとしても、家族がそれを望んでいなければよい結果とは言い切れません。ましてや望まない方向に行くのであれば、サービス自体が続く可能性も低くなってしまうからです。
できることが増えたのに
私が担当させて頂いたある利用者さんは、リハビリを通じて歩行が安定したことで施設に入所されてしまったという出来事がありました。
介入当初は腰痛による活動量の低下が課題となっており、腰痛の改善、活動量の向上、歩行の安定性向上を目的にサービスが開始されました。二世帯住宅に住まわれており、二階に住む息子さんがキーパーソンとなっていたのですが、日中の介護をしているのはお嫁さんでした。
経過とともに腰痛も軽減され、活動量の向上に伴い少しずつ歩行練習の頻度が増えてきたところで担当のケアマネジャーさんから連絡が入りました。内容は〝施設入所が決まりました〟というものでした。
なぜ施設入所が決まってしまったのか
なぜ施設入所が決まったのか理由を確認すると、歩く音が気になってしまうというお嫁さんの意向が強く働いていたようでした。歩行機会が増えるにつれ、廊下を歩く音が二階まで響くため気になって仕方がないというものでした。
そんな理由で施設入所を決めてしまうのかと疑問に思う方もいますが、施設に空きがあり、同居する家族が希望し、本人も承諾しているのであれば施設入所は認められてしまいます。
施設入所について利用者さんがどう思っているのか聞いてみると〝お嫁さんに迷惑をかけるのであれば仕方ない〟とどこかスッキリした表情がとても印象に残っています。
このように、生活動作が安定性が向上したり歩行機会が増えたことは、リハビリの結果でいえばしっかりと役目を果たせたと言えるかも知れません。
ただ、一緒に生活している家族にとってはこの結果が喜ばしい出来事とは言い切れず、場合によっては以前よりも負担が増えてしまったということもありえるのです。
決定権を持っているのは
たとえ利用者さんが建てたお家でも、同居している家族が介護できないと判断されてしまうと残念ですが自宅で生活することは難しくなります。
それは、お嫁さんやお婿さんなど血縁関係の有無に関わらず、血の繋がった息子さんや娘さんでも〝もう限界〟と匙を投げられてしまえばどうしようもありません。
利用者さんが最期まで自宅での生活を望んでいるのであれば、家の中で決定権を持っている家族を把握して、その家族の希望に沿う形でリハビリを行うというのもひとつのアプローチ方法かもしれません。
身体機能を改善することも重要ですが、それ以外にも利用者さんが望む生活に沿う形で介入していくこともリハビリの役割と言えるのかもしれません。
まとめ
利用者さんが望む生活を叶えるためには
⑴出来ることが増えることが必ずしも喜ばしいことではない。
⑵良くなったのに施設入所が決まってしまうことだって十分にありえる。
⑶リハビリでみんなが望むちょうどいいところに導くのもテクニックのひとつ。
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