訪問看護ステーションに勤務している人の中には、秋頃から給与明細に〝調整手当〟という項目でいくらかの手当てが追加されていた方もいたのではないでしょうか。私も1000円程度の額が加算されており、気になって調べてみたところベースアップ評価料の恩恵だったことが判明しました。
訪問看護ベースアップ評価料の内容
ベースアップ評価料は、基本給もしくは毎月支給する手当のベースアップを目的に新設されました。
① 2024年度・・・2.5%、 ② 2025年度・・・2.0%
上記を目安に賃金上昇を行なうための特例対応として、訪問看護ステーションに勤務する職員の賃金を改善する場合に算定することができます。
ベースアップ評価料(Ⅰ)
算定料
780円 利用者1人につき月1回まで算定可能
対象者
① 看護職・・・・・看護師・保健師・准看護師・看護補助者
② リハビリ職・・・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
③ その他・・・・・精神保健福祉士
※上記のうち、管理者の業務に専従する者を除く職員が対象
※事務作業専属職員は含まれまない
※看護補助者が訪問看護に従事する職員の補助として事務作業を行う場合は対象
算定要件
■医療に従事する職員が勤務していること。
■2024年度及び2025年度で対象となる職員の賃金改善を行うこと。役員報酬や定期昇給による賃金改善は含 まない
■賃金改善は、基本給等の引き上げ(ベースアップ)で実施する。またベースアップ評価料はベースアップとそれに伴う賞与・時間外手当・法定福利費などの増加分に使用する
■2024度に対象職員の基本給等を2023年度と比較して2分5厘以上引き上げ、2025年度に対象職員の基本給等を2023年度と比較して4分5厘以上引き上げた場合については、事務職員等の当該訪問看護ステーションに勤務する職員の賃金(役員報酬を除く)の改善(定期昇給によるものを除く)を実績に含めることができること
■2024年度・2025年度に「賃金改善計画書」の作成が必要
■労働基準法をはじめとする労務関連諸法規を遵守する ※ベースアップ評価料(Ⅱ)も同様
■対象職員に対して、賃金改善の実施方法等について、賃金改善計画書の内容を用いて周知する。就業規則等の内容についても同様また、対象となる職員から評価料ベースアップ評価料に関する賃金改善について照会があった場合は、書面を用いて説明する ※ベースアップ評価料(Ⅱ)も同様
ベースアップ評価料(Ⅱ)
こちらの項目は、ベースアップ評価料(Ⅰ)だけでは賃金増が達成不可能な場合に適用されます。
〝上乗上乗せ形でベースアップ評価料(Ⅱ)を算定。
算定料
対象職員の給与総額、ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定金額見込み、ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数見込みをもとに全18区分に分類される。
最も安い区分1で10円、最も高い区分18で500円(いずれも月1回限り)。
スコア(計算結果) | 区分 | 金額 |
0を超える | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)1 | 10円 |
15以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)2 | 20円 |
25以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)3 | 30円 |
35以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)4 | 40円 |
45以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)5 | 50円 |
55以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)6 | 60円 |
65以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)7 | 70円 |
75以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)8 | 80円 |
85以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)9 | 90円 |
95以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)10 | 100円 |
125以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)11 | 150円 |
175以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)12 | 200円 |
225以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)13 | 250円 |
275以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)14 | 300円 |
325以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)15 | 350円 |
375以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)16 | 400円 |
425以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)17 | 450円 |
475以上 | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)18 | 500円 |
対象者
ベースアップ評価料(Ⅰ)と同じ。
算定要件
■ベースアップ評価料(Ⅰ)の届出を行っている
■ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定金額見込みが、対象職員の給与総額×訪問看護ステーション利用者数に占める医療保険利用者割合を乗じた数の1分2厘未満であること。
※同月に医療保険と介護保険の給付を受ける利用者は、医療保険利用者として扱う
医療保険の利用者割合 = 直近3か月の1月あたりの区分番号02の1の算定回数/直近3か月の1月あたりの 医療保険制度の給付の対象となる訪問看護を受けた者 +介護保険制度の給付の対象となる訪問看護を受けた者
■訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の訪問看護ステーションごとの区分については、 当 該訪問看護ステーションにおける対象職員の給与総額、訪問看護ベースアップ評価料 (Ⅰ)により算定される金額の見込み並びに訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定 回数の見込みを用いて算出した数【A】に基づき、別表2に従い該当する区分のいずれかを届け出ること
【A】 = 対象職員の給付総額×医療保険の利用者割合×1分2厘 - 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される金額の見込み訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込み
■上記について、算定を行う月、その際に用いる「対象職員の給与総額」及び「訪問看護 ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される金額の見込み」の対象となる期間、算出し た【A】に基づき届け出た区分に従って算定を開始する月は別表3のとおりとする。
「対象職員の給与総額」は、別表3の対象となる 12 か月の期間の1月あたりの平均 の数値を用いること。 「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)により算定される金額の見込み」及び「訪問看 護ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見込み」は、訪問看護管理療養費(月の初日 の訪問の場合)の算定回数を用いて計算し、別表3の対象となる3か月の期間の1月あ たりの平均の数値を用いること。
また、別表3のとおり、毎年3、6、9、12 月に上記の算定式により新たに算出を行 い、区分に変更がある場合は算出を行った月内に地方厚生局(支)長に届出を行った上 で、翌月(毎年4、7、10、1月)から変更後の区分に基づく金額を算定すること。
なお、区分の変更に係る届出においては、「当該評価料による賃金の改善措置が実施されなかった場合の賃金総額」によって対象職員の賃金総額を算出すること。 ただし、前回届け出た時点と比較して、別表3の対象となる 12 か月の「対象職員の 給与総額」並びに別表7の対象となる3か月の「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)に より算定される金額の見込み」、「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の算定回数の見 込み」及び【A】のいずれの変化も1割以内である場合においては、区分の変更を行わ ないものとすること。
新規届出時(区分変更により新たな区分を届け出る場合を除く。以下この項において 同じ。)は、直近の別表3の「算出を行う月」における対象となる期間の数値を用いること。ただし、令和6年6月3日までに届出を行った場合は、令和6年6月に区分の変 更を行わないものとすること。
■対象職員の賃金改善を行う場合、2024年度・2025年度に定期昇給を除き必ず実施しなければならない
■賃金の改善には、ベースアップ等による増加やそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費などを使用する。ただし、ベースアップ等を行った訪問看護ステーションで、
1.収入が増加分を上回ったことで追加のベースアップ等が困難な場合
2.賞与等の手当てによって賃金改善を行った場合
3.翌年度の賃金改善のために繰り越しを行う場合
はこの限りではない
賃金改善は対象項目を特定して実施する。改善されたか否かは、ベースアップ評価料(Ⅱ)による改善措置が実施された場合、されなかった場合の賃金総額の差で判断される
■2024年度・2025年度に「賃金改善計画書」の作成が必要
■常勤換算で2人の対象職員が在籍している
※医療資源が少ないなど厚生労働大臣が定めた地域は対象外
■社会保険診療等収入金額の合計額が、総収入の80%超
留意点
■賃金改善計画書を新規届出時と毎年4月に作成し新規届出時と毎年6月に地方厚生(支)局長に届け出る。
■前年度の賃金改善の取組状況を評価するための〝賃金改善実績報告書〟を毎年8月に作成。地方厚生(支)局長へに報告。
■賃金水準を引き下げた上で(両ベースアップ評価料による賃金改善分は除く)賃金改善を行わない場合は〝特別事情届出書〟の届出が必要。年度を超えて対象職員の賃金を引き下げる場合は、次年度も賃金改善計画書を提出する際に再度届出が必要。
■算定に関わる書類は算定する年度が終了した後〝3年間〟保管する。
■賃上げの対象職種や具体的な金額についてはそれぞれの訪問看護ステーションで決めることができる。職種間で賃上げ金額に差を設けること可能。
まとめ
訪問看護ステーションのベースアップ評価料については、
1、2024年、2025年に掛けて支給する手当のベースアップを目的として算定できる。
2、評価料は(Ⅰ)と(Ⅱ)に分けられている。
3、それぞれに細かい要件が定められており留意点もよく確認する必要がある。
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