2026年(令和8年)6月1日より、これまで対象外であった訪問看護ステーションにおいても、新たに「介護職員等処遇改善加算」が適用されることが決定しました,。今回の改定は、看護師や理学療法士などの訪問看護職員の賃金引き上げを目的としたもので、事業所の収益構造に直接的な変化をもたらします。
処遇改善加算による1.8%上乗せで得られる恩恵とは
収益はどう変わる?「1.8%」の上乗せ
今回の改定により、介護保険分の訪問看護報酬(介護予防含む)に対して1.8%の加算が実施されます,。これは、基本報酬そのものが底上げされる形となるため、事業所の売上(収益)は直接的に増加します。
ただし、注意点としてこの加算は**「介護保険分」のみが対象**であり、医療保険適用の訪問看護分は含まれません,。医療保険分については、別途診療報酬改定による対応(プラス改定)が見込まれており、訪問看護は医療と介護の両面から賃上げ原資が確保されるのが大きな特徴です
【早見表】売上規模別の増収シミュレーション
実際に自社の収益がどの程度増えるのか、介護保険分の月商に応じたシミュレーションを以下の表にまとめました。
| 介護保険分の月商(医療分を除く) | 増収額(月額) | 増収額(年額) |
|---|---|---|
| 200万円 | 約 3.6万円 | 約 43万円 |
| 300万円 | 約 5.4万円 | 約 65万円 |
| 400万円 | 約 7.2万円 | 約 86万円 |
| 500万円 | 約 9.0万円 | 約 108万円 |
| 600万円 | 約 10.8万円 | 約 130万円 |
※地域区分単価等により若干の変動があります。
例えば、月商(介護分)300万円でスタッフが5名(常勤換算)のステーションの場合、**スタッフ1人あたり月額約1.1万円(年額約13万円)**の賃上げ原資が生まれる計算になります。
加算取得のための「重要な要件」
この収益(加算)を得るためには、単に申請するだけでなく、いくつかの要件をクリアする必要があります。
賃金改善要件
加算として得た収益は、原則として全額(またはそれ以上)を職員の賃金改善に充てる必要があります,。そのため、この1.8%分は事業所の「純利益」として残るものではなく、あくまでスタッフへの還元が前提となります,。
職種の拡大
令和8年の改革案では、看護職だけでなく、これまで対象外だった**「事務職員」などのその他の職種**も賃上げの対象に含めることができる方向で検討されています,。
DX・生産性向上の要件化
今回の改定で非常に重要なのが、「ケアプランデータ連携システム」の導入(または導入の誓約)が要件となる見込みである点です,。アナログな業務から脱却し、ICTを活用して生産性を高めることが、加算算定の条件となります。
経営者が取るべき戦略:手当型と採用への活用
増えた収益をどのようにスタッフに配分すべきか、経営リスクを抑えるためには「処遇改善手当」としての支給が推奨されます,。基本給(ベースアップ)を上げると一度上げた給与を下げることが困難になりますが、手当として支給することで「加算に基づいた支給」であることを明確にできます。
また、この加算を「採用の武器」として活用することも重要です。求人票に「処遇改善加算取得により月額1〜2万円の賃上げ実施」と具体的に記載することで、近隣の競合ステーションとの差別化を図ることができます。
事務負担は「コスト」ではなく「投資」
「システムの導入は面倒だ」と感じるかもしれませんが、月商300万円の事業所なら年間約65万円の増収が見込めます。システムのコストを差し引いても年間60万円以上のプラスになり、さらにFAX送信などの事務作業が削減されることで、管理者が営業やスタッフ面談に割ける時間が増えるというメリットもあります。
まとめ
2026年6月の処遇改善加算新設は、単なる給与アップの制度ではなく、「リスクを抑えて待遇を良くし、良い人材を採用し、業務効率化を進める」ための経営施策です。
- 試算する: 自社の介護保険売上でいくら増収になるか確認する。
- 設計する: 「手当」を中心に無理のない配分方法を決める。
- アピールする: 求人票を更新し、採用の武器にする。
- 投資する: ICT化(データ連携等)を進め、業務効率を向上させる。
制度が始まってから慌てるのではなく、今から準備を進めることで、スタッフを守り、地域で選ばれるステーションへと成長させることができます,。まずは社労士や専門のシステム担当者に相談することから始めてみましょう。

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