基本報酬の引き下げの背景
在宅サービスの代名詞ともいえる〝訪問介護サービス〟の介護報酬が引き下げられたことを受け、高齢社会をよくする女性の会・ウィメンズアクションネットワークなどの5団体は引き下げに抗議、撤回を求める緊急声明を公表したことがニュースになっています。
深刻な人材不足のなずなのに
訪問介護といえば、訪問看護ステーションで仕事をしていれば一緒に働く機会も多いサービスのひとつで、いわゆる〝ホームヘルパー〟さんです。身体介護と生活援助の分野が設けられ、必要とされる身の回りの支援を行う在宅生活に欠かせないサービスです。
以前から訪問介護を担う人材が不足していることは知られていましたが、2024年の改定で介護報酬が引き下げられることに驚いた方も多いのではないでしょうか。なぜ、国は人材が不足しているはずの訪問介護の診療報酬を引き下げる決定をしたのでしょうか。
訪問介護の利益率が高かったから?
マイナス改定となってしまった根拠のびとつに、訪問介護の収支差率(利益率)があげられています。厚生労働省が実施した〝介護事業経営実態調査〟によると、22年度決算では訪問介護の利益率は7.8%となっており、介護サービス平均の2.4%を大きく上回っていたことがわかりました。
ちなみに収支差率(利益率)が高い介護サービスの内訳は次の通りとなっています。
1位 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 利益率 11.0%
2位 夜間対応型訪問介護 利益率 9.9%
3位 訪問リハビリテーション 利益率 9.1%
4位 訪問介護 利益率 7.8%
訪問看護ステーションの利益率は5.9%となっています。
収支差率とは
収支差率とは、売上金額に対する利益の割合を測る指標のことです。数値が高いほど、高い収入で支出が抑えられているということになります。
訪問介護や訪問リハビリの場合、基本報酬に対して人件費が低く抑えられているため収支差率が上位に位置付けられているのでしょうか。この場合、基本報酬を引き下げるのではなく給料を上げて待遇を良くすることで、人材確保に繋げたほうが良いように思いますが。
訪問看護サービスはどうなる
これから続々と改定の内容が明らかになってくると思いますが、看護に比べてリハビリの基本報酬が引き上げられる可能性は低いように思います。毎回改定の度に引き下げや指示書や報告書の記載内容の調整、要支援リハの縛りなど、業務を複雑化する傾向が続いています。とても引き上げを期待できる要素は見受けられません。
過去に改定の案として挙がっていた、〝看護とリハの人員割合〟が再議論、採択されてしまった場合には、多くの療法士が露頭に迷ってしまうことが予想されます。
まとめ
2024年の介護保険改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことは、
1、介護サービスの収支差率(利益率)が高かったが原因。
2、人材不足の状況はますます深刻化していくことが懸念される。
3、訪問リハの利益率も高いため、リハビリも目を付けられてしまう?
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