訪問看護では、毎月の評価でアセスメントを行なっています。
看護やリハビリを実施する際に行うアセスメントとは、それぞれの視点から観察された客観的な情報と、利用者や家族から得た主観的な情報をまとめ、課題や解決策を分析する過程のことをいいます。これらを実施することで、看護やリハビリの方針を明確にすることができます。
バーセルインデックスを使いこなす
アセスメントのひとつに、日常生活動作を評価雨する項目が設けられています。これは、介護ソフトのアセスメント欄をはじめ、訪問看護報告書別紙様式2ー(1)にも組み込まれています。
評価スケールは〝バーセルインデックス (Barthel Index) 〟が採用されています。理学療法士や作業療法士等のリハビリ職ではれば馴染みのあるスケールですが、看護師やケアマネジャーの中には初見という方も少なくないようです。
日常生活動作の評価スケールには、バーセルインデックスをはじめ、機能的自立度評価表(Functional Independence Measure):通称〝FIM(フィム)〟が知られています。〝FIM〟の特徴として、介護負担°が細かく評価できる点が挙げられ、妥当性や信頼性が高い評価スケールとしてリハビリ分野では幅広く用いられています。
〝FIM〟がアセスメントに用いられていない理由として考えられることは、評価をする際に基礎的な知識が必要になる点と、評価項目が細かすぎる点が挙げられると思います。
バーセルインデックスで評価してみよう
バーセルインデックスを用いて評価をするにあたって〝誰が〟評価できるのかという声が聞かれますが、〝誰でも〟評価することは可能です。診断ではないため、リハでも看護でも介護士でも誰が評価しても問題ありません。
バーセルインデックスは、食事・移乗・整容・トイレ・入浴・歩行・階段昇降・更衣・排便・排尿の10項目で構成されており、項目ごとに得点(15点、10点、5点、0点)が振り分けられています。
合計するとちょうど100点になるため、おおよその生活動作能力を把握することができます。
点数ごとの区分は以下の通り。
100点:全自立
85点:自立
60点:部分自立(カットオフ)
40点:部分介助
0点:全介助
・カットオフとは、正常とみられる範囲を決めるときに、その範囲を区切る値のことを指します。
21a0451299002e266205182f8298ff43食事の評価
10点:自立。ひとりで食べきることができる。自助具や補助具の着脱も自立している。
5点:部分介助。食事の一部に介助を要する。きざみ食の準備や食べこぼしのケアなど。
0点:全介助。
食事の評価では、食事を作る過程は評価に含まれていませんが、食べ物の形態に手を加えている場合には一部介助に分類されます。作ってもらっていれば同じような気もしますが。
移乗の評価
15点:自立。ベッドまたは車椅子への移乗が全てひとりでできる。
10点:部分介助。フットレストの上げ下ろしやブレーキ操作の一部に介助を要する。
5点:部分介助。起き上がりや座位保持はできるが、移乗に介助を要する。
0点:全介助。
移乗の評価は、バーセルインデックスの中で唯一15点の配点が設けられています。一部介助については、間接的な介助であれば10点。移乗動作自体に介助を要していれば5点です。
整容の評価
5点:自立。手洗い、洗面、歯磨き、整髪、髭剃りが全てひとりでできる。
0点:全介助。一部または全てに介助を要する。
整容の評価は、シンプルでわかりやすいです。ひとりでできれば自立。一部介助でも0点です。
トイレ動作の評価
10点:自立。全ての動作がひとりでできる。ポータブルトイレを使う場合はトイレの洗浄まで。
手すりや福祉用具を使用してもひとりでできていれば自立。
5点:部分介助。清拭やズボンの上げ下ろしに介助を要する。身体を支える程度の介助を要する。
0点:全介助。
トイレ動作の評価では、ポータブルトイレを使用している場合、トイレの洗浄までが自立している必要があります。自宅や病院で評価する際は、他者が手伝っているケースがほとんどですが。
手すりや補高便座を使用している場合でも、ひとりでできていれば自立となります。
入浴の評価
5点:自立。シャワー浴も含めて、ひとりで入浴することができる。
0点:全介助。一部または全てに介助を要する。
入浴の評価では、浴槽の出入りや洗髪・洗体動作に介助を要する場合は0点になります。
歩行の評価
15点:自立。ひとりで45m以上歩くことができる。
義肢装具、杖、歩行器(歩行車は除外)の使用も含む。歩行車や車椅子は除く。
10点:部分介助。見守りやわずかな介助があれば45m以上歩くことができる。
5点:部分介助。歩くことはできないが車椅子の操作は自立していて45m以上移動できる。
0点:全介助。歩行や一部の車椅子の操作ができない。
歩行の評価については、あくまで〝歩く〟ことを評価するため、車椅子の自操が自立していても5点の評価となります。歩行器と歩行車が区別されている点も要チェックです。
移動と同様に15点の配点が設けられています。
階段昇降の評価
10点:自立。見守りや介助なく安全に階段昇降をすることができる。杖や手すりの使用も含む。
5点:部分介助。見守りや介助を要する。
0点:全介助あるいは不能。
階段昇降の評価では、杖や手すりを使用をしていてもひとりでできれば自立の評価となります。また、〝安全〟にできることも自立に該当する条件となっています。
更衣の評価
10点:自立。全ての着替え、靴の着脱までひとりでできる。
コルセットや装具を使用している場合は、その着脱も自立している。
5点:部分介助。適当な時間内に更衣動作の半分以上をひとりで行うことができる。
0点:全介助。
更衣の評価については、靴の着脱まで評価に入っている点に注意が必要です。また、靴下の使用は個人の好みで分かれるため、普段から素足で靴を履く人の場合はそのスタイルを尊重する必要があります。
排便コントロールの評価
10点:自立。失禁がなく排便のコントロールが可能。座薬や浣腸を使用してもよい。
5点:部分介助。失禁がある。または座薬や浣腸の使用に介助を要する。
0点:全介助。失禁状態。
排便コントロールの評価では、トイレの介助量は評価に含まれません。便意のコントロールにのみ焦点を当てて評価をしています。
排尿コントロールの評価
10点:自立。失禁がなく排尿のコントロールが可能。収尿器の着脱、清掃管理ができる。
5点:部分介助。失禁がある。 収尿器の着脱や清掃管理に介助を要する。
トイレに行くまで、または尿器を持ってきてもらうまで間に合わない。
0点:全介助。失禁状態。
排尿コントロールの評価では、尿器の用意をしてもらうことは評価に含まれていませんが、着脱を手伝ってもらう場合は部分介助となっています。
まとめ
バーセルインデックス(Barthel Index)とは、
1、バーセルインデックスは、厚生労働省で規定の評価法として用いられている。
2、評価は、看護師でも介護士でも誰でも実施できる。
3、〝しているADL〟ではなく、〝できるADL〟を評価する。
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