訪問看護(リハビリ)指示書の役割
私たちが訪問リハビリで仕事をするためにまず用意する書類が、医師が処方する訪問看護指示書です。
病院でいうとリハの処方箋と同じ役割を持っており、1日でも期限が過ぎてしまった場合は、一切の介入ができなくなってしまいます。
そんな指示書に、令和3年度からある項目が追加されたことをご存知の方も多いと思います。
新しい指示書はこちら
令和3年度から使用される訪問看護指示書の様式がこちらです。
c7cd5f8aec9452247ab0ff103bfdd600一見したところ、大きな変更点はないように見えますが、リハビリの欄に追加された項目が確認できると思います。
変更箇所1:職種の指定欄が設けられた
中央からやや下のほうに〝理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問看護の一環として行うものについて〟という文章が追加されています。
病院のリハビリ処方については、医師が理学療法、作業療法、言語療法の中から必要なリハビリテーションを決定しています。
ところが、介護保険における訪問看護(リハビリ)については、担当職種まで細かく指定されていませんでした。知らなかった人も多いと思います。
依頼の内容や利用者の希望によって職種を指定する以外は、基本的に請け負った事業所で担当者を決めています。
疾患やニーズに応じて適材適所で担当を決めるというよりも、指定された時間と場所に行ける人が担当するケースが多いように感じます。
こうしたある意味であいまいな職種の決め方が、今回の改定で見直されるようになったようです。
変更箇所2:介入頻度と時間の欄が設けられた
訪問看護ステーションで実施するリハビリでは、医師による明確な介入頻度や時間の指定はありませんでした。
介護保険のルールでは、保険点数の範囲内であっても一週間に2時間までという制約があり、1時間を2回、または40分を3回が上限ということになります。
今回の改正では、一週間に2時間の制限は変わりなく、介入頻度と時間についても担当医師が指示するように変更されています。
これからは介入しづらくなる?
今回の改正によって、今まで臨機応変に対応していたことができなくなる可能性があります。
まず一点めは、〝引き継ぎや代行訪問がやりづらくなる〟です。
職種の指定が設けられたことは、裏を返すと〝職種が制限された〟ということになります。
今まで理学療法療法士が介入していた担当者を、作業療法士が引き継ぐことができなくなります。
また、担当者が休みで不在の時、変わりに訪問できるのは同じ資格を持つ人だけになってしまうということになります。
利用者さんにとっては、継続したサービスを受けづらくなったように思います。
二点目は、訪問頻度や時間の偏向の度に〝指示書の再発行〟が必要になるということです。
リハビリに手応えを感じて回数を増やしたいというケースでは、改めて指示書の依頼を出し、600円位の手数料を支払う必要があります。そこまで手間がかかるのであれば・・・と増回を諦めてしまう方も出てくるのではないでしょうか。
指示書の様式が変更された背景を勘ぐると
ここ数年、訪問看護におけるリハビリの単位数は下がり続けています。ちなみに、看護師による訪問は微増ですが上がっているます。
単位数が引き下げられている背景には、訪問リハビリを実施しすぎている現状があるようです。
どのステーションをみても、基本的に看護師数名に対し、多くの療法士が所属しているところが多いと思います。
なぜそうなっているか答えはシンプルで、訪問看護ステーションのビジネスモデルとして〝療法士を安く雇ってたくさん稼いでもらう〟というのが一番効率がいいからです。
そうした事業所が増えると介護保険におけるリハビリの利用料が増え、リハビリの単位数を引き下げるしか方法がないのです。
さらに今回の指示書の様式を変更することで、ますますリハビリの介入がしづらくなったことを考えると、遠回しに〝リハビリをやりすぎるなよ〟という声が聞こえてきそうな気がしてきませんか?
まとめ
令和3年度版、訪問看護指示書の様式変更に伴う現場の対応は、
① 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の職種が指定されるようになった。
② 訪問する時間、頻度について医師が指示をするようになった。
③ 現場での臨機応変な対応が難しくなり、担当者や介入頻度が変わる度に指示書が必要。
コメント