自宅に帰れる人とそうでない人
訪問リハビリで出会う利用者さんのなかには、介護度が多いにも関わらず自宅で生活されている方がいらっしゃいます。寝たきりで痰の吸引が必要な状態にも関わらず、ご家族ひとりで介護をしているというケースもめずらしくありません。
反対に、訪問リハビリを利用されている方が急なタイミングで施設入所が決まり、サービス終了となってしまうこともあります。リハビリは順調で生活様式が整ってきた状況でも自宅で暮らせないという背景には、なにが影響をしているのでしょうか。
どうやら、住み慣れた自宅で生活できるかどうかの分かれ目は、身体機能や認知機能、日常生活動作能力だけで決まっている訳ではなさそうです。
身体機能や介護力で見た時の〝自宅で暮らせるライン〟
病院でリハビリを受けてから自宅に帰るという場合、療法士はどういった視点でその評価を行っているのでしょうか。私自身も病院で勤務をしていた時は、意見を求められて悩んだ記憶があります。
客観的な評価でいえば、患者さんの身体能力と、同居するご家族のマンパワー、住環境のバランスを踏まえて決まることが多いように思います。
身体機能や生活動作能力では、セルフケアや屋内移動が自立していれば、それ以外はサービスを利用して一人暮らしをするこは可能です。
また、寝たきりや車椅子を中心とした生活様式であっても、日常生活を送るうえで必要な介護をできるマンパワーがあれば問題ありません。
在宅生活が難しい事例でいえば、著しい認知機能の低下、頼れる親族や知人が近くにいない、身体能力にあった住環境が整備できないといったケースが考えられます。こうしたケースでは、自宅に帰っても生活を維持することが大変になってしまい、再入院や施設入所に移行される方が多い印象です。
病院のリハビリをみて思ったこと
訪問リハビリの利用者さんが入院をして、退院後の生活先を決めるために病院のリハビリ場面を見学に行くことがあります。ケアマネジャーやご家族と共に、在宅生活をどう支援していくかイメージするためには有効な方法です。
先日も病院のリハビリを見学させてもらったのですが、そこでリハビリを担当していた理学療法士の方のコメントはかなり深雑なものでした。
自宅に退院させたいご家族の意向を踏まえたうえで〝自宅退院は無理〟〝希望するなら止めないが療法士が介護しても大変だ〟というコメントをされていました。
あくまで患者さんの身体機能や生活動作能力と家族のマンパワーのみで評価した結果を、忖度することなく伝える療法士と、悔しい想いを隠さないご家族の方の表情がとても印象てきでした。
自宅退院させないことが本人と家族のためであることは重々承知していても、なんとか自宅に退院できる方法を一緒に模索する姿勢だけは欠かしてはいけないように思いました。
一方で入院期間に携わった側の見解として、私情を抜いた客観的な視点というのも、欠かすことのできない評価のひとつになってくると思います。
結局は家族の想い次第
結局のところ、患者さんが寝たきりでも、家族の介護力が少なくても、本人が自宅に帰りたいと思っていて、家族も家に帰したいと思っていれば、自宅で暮らすことができます。ADLや介護力は二の次となってしまうわけです。
その期間が短くても、自宅で家族と過ごせる機会はとても貴重な時間となっているようです。
新型コロナウイルスの影響により、病院の面会もなかなか難しい状況が続いています。一階のロビーであれば会うことができても、病棟に上がって面会する機会は極めて少ないのが現状です。
こうした現状を踏まえると、寝たきりに近い方のご家族は、入院中にほとんど患者さんに会うことができません。入院先からそのまま施設入所となると、最期まで十分に会うことすらできなくなってしまう可能性もあります。
自宅で過ごしたいと思っている方は、家族の方にやさしく接していたほうがよいかもしれません。
まとめ
自宅退院を実現するためには、
① 客観的な視点では、身体機能とマンパワーのバランスで決まる。
② 結局のところ、自宅に帰れるかどうかは家族の想い次第。
③ 自宅で暮らしたい人は、今のうちから家族の人にやさしく接しておこう。
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