警戒されていることに気づいていますか?
理学療法士や作業療法士として患者さん、利用者さんと接する中で、原因はわからないけれどどこかやにくさを感じる場面に遭遇したことはないでしょうか?
その原因の多くは、相手が放つ〝警戒心〟かも知れません。
利用者さん自身ではなく、疾患や身体機能ばかりに気を取られている療法士は特に注意が必要な点ではないでしょうか。
良かれと思ってやっていることも、相手が心を開いてくれていなければ長期的な関わりを築くことは難しくなってしまいます。
そんな利用者さんの〝警戒心〟を解くにはどうしたらよいのでしょうか。
警戒されて当たり前の環境
病院のリハビリは、リハ室や病棟など多数の人がいるパラレルな環境のためそこまで警戒されることはありませんが、訪問リハビリではそうはいきません。
自分の家で、初めて会う療法士に身体機能を評価される、こちらは当たり前のように何度も繰り返していることですが、利用者さんにとっては受け入れがたいところもあると思います。
特に警戒心が強い利用者さんの背景には、病院のリハビリで辛い思いをされていたり、本人の希望ではなく、家族の勧めで訪問リハを利用されていることが原因として挙げられます。
特に病院で受けたリハビリのイメージにネガティブな印象を持っている方は、それを払拭するのには多くの時間を要することになります。
利用者さんに合わせて接し方を変える
仕事の出来る療法士は、人をみて接し方を調整することができます。いくらスキルや知識が豊富な療法士でも、利用者さんの顔色を伺えないタイプの人間はあまり評判が良くありません。
特に訪問リハビリでは、密室に近い環境のなかマンツーマンで行うことが多いため、療法士の適切な立ち振る舞いは重要なスキルとなります。
リハビリに対して消極的な方に対しては、無理なく取り組めることを保証したり、楽しみながらリハビリできる内容を提案してみると感心を持ってもらえることが多いです。理詰めでリハビリの必要性を説いてもあまり効果はありません。
また、明るく元気に接してくる療法士を嫌がる方も少なくありません。初対面で張り切り過ぎてしまった場合には、次回から会話量や声のトーンを調整しながら落ち着いた雰囲気を醸し出してみてください。
療法士目線のリハビリではなく、利用者さんに合わせたリハビリを提供できるようになるには、関わり方を客観的に振り返ってみるのがポイントです。
家族を上手く巻き込んでみる
試行錯誤を繰り返しても尚、利用者さんとの関係構築に苦戦してしまう場合は、ご家族に直接尋ねてみると良いかもしれません。
私自身もよく使う手段ですが、リハビリ終了後にご家族と会話をする際、利用者さんの人柄について尋ねてみたり、不快な点があれば遠慮なく伝えてもらうようにお願いしています。
特にクレームには至らなくても、利用者さんが気を使って言いづらい、〝ストレッチが強すぎる〟〝話し声がうるさい〟といった内容は、ご家族を介して聞き出せるとリハビリもスムーズに進みます。
会うほどに距離は縮まる
人間は、対面する機会が増えれば増えるほど警戒心を解きやすくなるという心理的な効果があると言われています。〝単純接触効果〟というものです。
訪問の現場でも、リハビリで伺う回数に応じて利用者さんの警戒心も解けやすくなっていくことがあります。
いきなりアクセル全開で自分の色を出すのではなく、様子をみながら会う度に少しずつ距離を詰めていくという作戦が一番理に叶っているように思います。
ただ、本当に相性が良くない場合は諦めも肝心です。いくら頑張っても会えば会うほど嫌われてしまうため、担当者の変更やリハビリ終了コースとなってしまいます。割り切って前を見ましょう。
ちなみに、利用者さんから拒否されることが多いスタッフは、その人自身に原因があるかも知れません。
まとめ
警戒心の強い利用者さんと出会った時は、
① まずは利用者さんのキャラクターや警戒心が強い背景を把握する努力をする。
② 家族を介したコミュニケーションを上手く活用する。
③ 会う回数が増えれば警戒心も少しずつ解けていく心理効果に期待する。
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