夢と現実の違い
私が作業療法士として仕事をする中で出会った患者さんのなかには、稀に〝夢の話〟を聞かせてくれる方と出会うことがあります。
ある患者さんに〝障害者がどんな夢をみるか知っている?〟と聞かれ、それ以降は出会う利用者さんの夢トークにアンテナを張るようになりました。
ちなみに今回の〝夢の話〟は、いわゆる睡眠中にみる夢の話です。
骨折などの整形疾患であれば、リハビリによって病前と同じような生活を取り戻される方もいますが、全員がそういう訳にはいきません。特に中枢疾患であれば、麻痺の影響によって思うように身体を動かせなくなったり、車椅子が移動手段になったりします。
身体機能や動作能力に変化が生じた場合、夢のなかではどういう認識で反映されているのか気になったので調べてみました。
夢を見る時に必要な記憶はどこからどこまで?
そもそも夢のメカニズムというのは、いつの時代にも研究されてはいるものの、未だに不眼な点が多く、それがまた魅力のひとつであると言われています。
夢で起こる内容の多くは、自身が経験した記憶をランダムにつなぎ合わせたものと言われています。そのため、昨日、一昨日の出来事と、5年前、10年前の出来事がごちゃごちゃになって夢をみることもあります。
つまり、障害者のみる夢は、病前の自分と現在の自分が混ざった状態で見ている可能性が高いということになります。
その夢の内容に何かしらの意味合いを持たせたものが〝夢診断〟となり、自身の無意識な心理状態を理解するきっかけになったりしています。
40代で脳梗塞を患った方がみる夢
リハビリで脳血管疾患を患う方の多くは高齢者に多い印象がありますが、30代〜40代の方ともお会いすることがあります。
私が担当させて頂いた40代の方もそのひとりで、リハビリ病院を経て訪問リハビリで携わらせてもらうことになりました。
この方の場合、発症直後の夢は元気に走り回る夢を多くみていたそうです。夢から覚めると自分の身体に麻痺が残っていることに気付き、落胆する日が続いたようです。
元気に走り回る夢は、発症から3年以上経過しても未だにみることがあり、本人曰く〝どこかで障害を受け入れられない自分がいるのではないか〟という言葉が印象的でした。
ちなみに、その方が調べた夢診断の結果では、元気に走り回る夢は〝健康を疎かにしているのではないか〟というストレスを感じていることがあるようです。少し当たっているような気がして驚きました。
難病を抱える80代の方がみる夢
20年ほどパーキンソン病を患っている方が話してくれた夢もとても印象深いものでした。
この方は普段から杖歩行が自立され、車椅子を利用したことはありません。それでも不思議なことに〝車椅子に乗って高速道路を走る夢〟をよく見るそうです。
私も気になったので夢診断で調べてみたところ、車椅子に乗っている夢は、理想と現実の落差に葛藤する心理状態を表すそうです。
普段は使用していない車椅子に自分が乗っている夢をみるというは不思議なものです。
結局なにが言いたいのか
私自身が気になっていたのは、夢の中でも麻痺の影響を受けるのかという点です。結論から言えば、病気になる前後の記憶を元に夢を作っているため、どちらの状態の夢もみるということになりそうです。
ただ、夢の内容で心理状況が分析できたり、障害受容の過程というのも大きな影響を受けており、夢へ反映されている感じがします。
少なくとも患者さんの気持ちや状況を理解する時にうまく活用できるのかも知れないですね。
まとめ
障害者がみる夢について考えた結果、
① 夢を見るための記憶は、ランダムに繋ぎ合わされていた
② 障害受容の過程も影響していそうな感じがする
③ 利用者さんの本音を垣間見るチャンスかも
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