訪問リハビリのゴールは利用者さん次第
病院で提供されるリハビリは、回復期で3ヶ月〜6ヶ月、一般や療養病棟などではもう少し長期間入院される方もいますが、いずれ退院日はやってきます。
一方で施設や在宅で生活される方を対象とした介護保険のリハビリテーションでは、基本的に介入できる明確な〝期間〟は決められていません。
特に訪問リハビリでは、状態によって5年〜10年以上にも及ぶ長期間の介入を経験することもあります。そこまで長期間の介入になると、ついついリハビリの内容や関係性もマンネリ化しやすくなってしまうため、注意して介入する必要があります。
常に一定の距離感を持って接する
訪問期間が長くなってくると、利用者さんとの間にも信頼関係が芽生えてくると思います。会話内容もプライベートなことに触れる機会も増えて、一見良い関係が築けていると思いがちですが、気を緩めてはいけません。
利用者さんが心を開いてくれるのはよいことですが、こちらはあくまで仕事で介入している立場です。〝親しき中にも礼儀あり〟で常に一定の距離感を保つ必要があります。
利用者さんの依存傾向が強い方なら尚更気を付けて介入する必要があります。そうしなければ、いずれは〝転移〟のように感情移入を伴うややこしい事態に発展しかねません。
私自身も4年ほど担当させて頂いた利用者の女性から、退職を機に担当を外れる際に〝この裏切り者が!!〟と厳しい言葉で叱責を受け、最悪な幕引きを経験したことがあります。
目標は定期的に見直してリハビリの必要性を再考する
訪問期間が長くなるにつれて〝この方のリハビリは本当に必要なのか?〟と疑問に思うことはないでしょうか。リハビリのゴールが〝利用者さんからの終了の申し出〟になってしまうことは避けるべきだと思います。
療法士が介入することにより〝症状の改善〟や〝悪化予防〟が図られている場合は良いのですが、それを踏まえても〝必要ない〟と感じるケースは確かいに存在します。
利用者さんは療法士が来てくれることで安心感を得ることができたり、家族の負担を和らげることがリハビリの役割になっていたとしても、定期的な見直しは必要不可欠となります。
リハビリの目標と利用者さんの意向を定期的に確認することで、惰性でダラダと続くリハビリにならないような取り組みが必要となります。
信頼関係の影に潜む気の緩み
訪問リハビリが長期間に及ぶと、ついついリハビリ内容も固定化されやすい傾向にあります。バイタルチェック、談笑しながらのストレッチやマッサージ、最後に軽めの全身運動といった形でお決まりのパターンを持っている療法士も多いのではないでしょうか。
利用者さん自身がそれを望んでいる場合は大きなトラブルにはなりませんが、こうした状況に疑問を持たれている場合は要注意です。
例えば、利用者さんの申し出によりしばらく歩行練習をやめて欲しいと訴えがあった後、数ヶ月以上も歩行練習を実施しない状況が続いてしまい、〝いつまでも歩行練習を再開してくれない〟と利用者さんからのクレームに繋がるケースも存在します。
一見、こちらには落ち度がないようにも思いますが、お互いに短期目標の立て直しから練習内容の再調整を行う作業を怠ってしまったことが原因です。
こうした事態は、理学療法士でも作業療法士でも介入期間が長ければ長いほど生じやすく、信頼関係の影で見え隠れする〝気の緩み〟に繋がらないように意識してください。
まとめ
リハビリのマンネリ化を予防するには
① 利用者さんとは一定の距離感を保ち、懐に入りすぎない
② 目標の見直しを定期的に行い、リハビリの必要性を確認する
③ 信頼関係が築けていることにあぐらを描かず、小まめなコミュニケーションを
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