トイレの環境調整をする時に気をつけるポイント

訪問リハのこと

1日に行う頻度が最も多い生活動作 第一位 トイレ

長かった入院生活を終え、在宅生活が始まってすぐに直面する課題が〝トイレが使いにくい問題〟です。

私が訪問リハビリで伺う利用者さんのなかにも、トイレの環境調整を要する方が一定数いることをからも、多くの方が悩まれていることだと思います。

病院でもらう退院サマリーにはトイレ動作は自立となっているにも関わらず、自宅では上手くできるようになるとは限らないのが訪問七不思議のひとつではないでしょうか。

病院のトイレは使いやすくて当たり前

今まで使っていた家のトイレが使いづらいと感じている原因は〝身体機能の変化〟と〝病院のトイレが使いやすい〟という点だと思います。

私も作業療法士としてリハビリ病院に勤務していたことがありますが、病院のトイレは手すりの設置、車椅子が転回できるスペース、看護師さんなどのマンパワーが確保されています。

特に最近では新しいリハビリ病院も多く作られ、こうした病院に入院されていた方なら尚更実感するのではないでしょうか。

こうした環境に加え、退院間近はリハビリも順調に進み、動作能力も比較的高い状態で実施しているため、病院のトイレで得た〝成功体験〟はかなり印象に残っているのだと思います。

自宅のトイレで一番の問題は〝狭さ〟

自宅のトイレで一番に感じるのはそのスペースの狭さではないでしょうか。基本的な家の作りとして、トイレの間取りは意図しない限り広く設けられていることはありません。

トイレの間取りは最低限に押さえ、その分のスペースを他の生活空間に活用している設計が多いのではないでしょうか。それほど自宅のトイレは狭いのです。

特に車椅子や歩行車でトイレを利用している方は、それらを携えてトイレに入ることは難しく〝トイレの環境〟に生活動作を合わせなければいけません。そこで無理をして転倒したり、介助者のご家族が腰を痛めてしまうというケースも多く出会ってきました。

ポータブルトイレはどうでしょうか。あれはあれでベッドサイドに設置しているものの、実際にトイレとして使用している方よりも、椅子や手すり、物置として活用されている方のほうが目立っている印象です。こちらは購入しているものなので、使い方は自由だと思いますが。

家族みんなが使いやすいトイレへ

トイレの環境調整をする時に一番注意が必要な点は〝誰が使うか〟という点です。利用者さんだけしか使わなければそれほど気にすることはありませんが、同居する家族のことも踏まえた調整が大切になります。

例えば、立ち上がりの際に前方に手すりや突っ張り棒をつけた方がよいと思われる事例でも、ご家族の中に体格のいい人が含まれていたらどうでしょうか。

利用者さんにとってのベストな環境でも、こうした事情を踏まえるとよい環境調整とはいえなくなってしまいます。

私が勤務しているステーションにも、こうした事例で家族からクレームが来てしまったこともあるので注意が必要です。

トイレで使える福祉用具

トイレで使用する主な福祉用具は、補高便座、手すり、肘掛タイプの手すりが中心だと思います。立ち上がり動作の負担軽減であれば、補高便座、L字手すりで解決できると思います。

腰の痛みで座位保持もままならない事例に関しては、肘掛タイプの手すりで座位保持中の負荷を軽減することも可能です。

私も一度、腰痛に悩む身長の高い利用者さんに補高便座を試してみたのですが、かえって便座上の座位保持が不安定となってしまい肘掛タイプの手すりに落ち着きました。

ただ、トイレ掃除がやりにくいというご家族からの意見もいただき、腰痛の緩和に伴い早々に引き上げてもらったことがあります。

まとめ

トイレの環境調整で注意をしておきたいポイントは

① 家のトイレは〝狭さ〟による課題が多い

② 家族が使いづらさを感じる環境調整はNG

③ 掃除や片付けがしやすい環境を考えよう

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