○○じゃないほう療法士
訪問リハビリを経験するようになり、避けては通れない事象のひとつが〝療法士の指定される〟問題ではないでしょうか。
利用者さんからしたら別に問題ではないのですが、訪問する立場ではかなりインパクトのある出来事です。
病院とは違い、訪問看護指示書にリハビリ内容の指示はあるものの〝職種の指定〟までは指示されることはありません。つまり、大腿部頸部骨折の方を作業療法士が担当したり、調理練習を理学療法士が担うことができます。
基本的にどの疾患にも適材適所で役割分担をしていければよいのですがなかなか上手くいかないことがあります。そこで今回は、利用者の間に生じる〝資格の価値観〟について考えてみました。
ネームバリューは〝理学療法士〟に軍配
私自身が作業療法士として仕事をしている分、余計に肌で感じる部分でもありますが、やはり理学療法士のネームバリューはかなり強い印象です。
恥ずかしながら、私も進路を決める際は理学療法のことしか知らず、挙げ句の果てに試験に落ち、第二希望だった作業療法学科に入学してしまった過去を持っています。
ちなみにネームバリューなどと格好つけて書いていますが、いわゆる〝リハビリ=理学療法〟という認識を持っている方が多いということです。
利用者さんやケアマネジャーの声
訪問リハビリで出会う利用者さんやケアマネジャーさんの多くは、リハビリといえば理学療法士が行うものだと思っています。
レアなケースでは〝訪問リハビリは理学療法士しか担うことができない〟という信念のもと、初回の担当車会議で退出させられたこともあります。
また、担当者会議で安易に名刺交換をしてしまうと〝作業療法士にリハビリができるのか〟という視線を感じながら会議に参加する羽目になります。
実際、利用者さんからも〝理学療法士がいい〟と言われ、担当を変えられたこともあります。リハビリの内容や治療の経過は同じでも、利用者さんにとって〝作業療法士〟より〝理学療法士〟に診てもらったほうがよくなる気がするのです。
また、ケアマネジャーさん自身も〝理学療法士限定〟で仕事を振ってくれることがあります。的座位適所で指定してもらう分には良いのですが、頭ごなしに理学療法士希望というのはあまり気分はよくありません。
作業療法士で困ったこと
私自身が作業療法士として訪問リハビリに出た際、どんな困ったことに出会したか整理してみました。
まず思い浮かんだのが〝下肢装具の調整〟です。利用者さんから装具の適合チェックや調整を依頼された時は、先輩の理学療法士に弟子入りをして下肢のいろはについて教えてもらったことがあります。
また、ホットパックや低周波治療器などの物理療法の分野についても、知識の少なさを実感させられました。
振り返ってみると、そこまで立ち行かないほど困ってしまうことはなく、足りない知識は同僚の理学療法士に力を借りれば補えることがほとんどだと思います。
もしも違う職種を希望されたら
こうした場面に出くわしたら、選択肢はひとつしかありません。
〝素直に諦めて担当を外れる〟ことです。これが私が行き着いた先に出した答えです。これなら自分以外はだれも傷つきません。空いてしまったその時間も、きっと新しい利用者さんですぐに埋まってしまいます。
私の場合、理学療法士を希望する利用者さんに〝作業療法士でも同じことができますよ〟とゴリ押しをしても、良い結果に結びついたことは一度もありません。
ケアマネジャーさんの説得を試みる手もありますが、そもそもこうした要望を通している時点で、ケアマネジャーさんの説得もあまり意味を持ちません。
本当の適材適所を理解され、ケアマネジャーの希望で資格の指定があった場合のみ、利用者さんを説得してみる価値はあるとは思いますが。
いずれにしても、最後に決めるのは利用料金を支払っている利用者さんです。サービスを受けるひとが満足していなければ、リハビリの押し売りになり、ありがとうの恐喝になってしまいかねません。
ことの成り行きに身を任せておくと、意外と楽ちんできて良いですよ。
まとめ
訪問リハビリの担うのは、
① ネームバリューでいけば〝理学療法士〟がやや優勢か
② 作業療法士が困るのは、下肢装具と物理療法の相談
③ 最後の決定権は利用者さんにあり、お金を払うのも利用者さんと承知する
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