病院と自宅の違い
退院が間近にせまった患者さんのなかには、作業療法の一環で調理練習を実施するケースがあります。多くは退院後に主婦としての役割を担う方々です。
病院で行う調理練習は、作る料理が決定したのち調理手順を工程別に分け、患者さんの身体能力に合わせて必要な道具や動作方法などを考えていきます。
作業療法室に併設されているキッチンで調理練習を行いますが、自宅と環境がことなるだけで調理の手際は大きく違ってくることがあります。
特に高次脳機能障害を呈されている方では、自宅で行う調理練習の方が手際よくより複雑な工程の料理に取り組むことができることもあり〝住み慣れた自宅〟の力を実感します。
そこで今回は、訪問リハビリで調理練習を行う時に気をつけておきたいことについてまとめてみました。
外傷のリスクに備える
調理練習を行う際に一番注意が必要なことは〝怪我〟です。特に訪問リハビリという環境ではこの点について細心の注意を払う必要があります。
調理を行う際に生じやすい怪我といえば〝切り傷〟と〝火傷〟です。切り傷は包丁やハサミを使用する際に起こりやすい怪我ですが意外な落とし穴もあります。
缶詰などを使用する場合に缶の蓋で指を切ってしまうことが多くあります。そのため包丁の取り扱い以外にも缶詰の取り扱いも評価しておく必要があります。
また、火傷についてはガスコンロの使用場面だけに目が行きがちですが、IHや電気コンロが設置されている自宅ではそちらの評価も忘れずに行います。
ガスコンロと違って見た目で熱さを判断することができないため火傷のリスクも高くなります。
また、電子レンジで加熱した際の火傷や冷凍食品の取り扱いによる火傷のリスクも潜んでいるため、感覚機能が低下されている方は要注意です。
食材の準備
調理練習を行う場合、当然ですが食材の用意も調理練習のなかに含まれます。同居されているご家族がいる場合では事前に用意してもらうことも可能ですが独居の方もいます。
ヘルパーサービスを利用されている方であれば、調理練習を行う前に用意しておいてもらうといった連携を図っておきます。
セラピストがリハビリ前に購入していく方法もありますが、調理練習がより実用的な活動へとつながっていくためには〝食材の購入方法〟についてもしっかりと評価しておく必要があります。
最近ではコンビニでも野菜や肉などの食材を購入することができたり、移動販売車や生活共同組合の配達サービスの活用も検討していきます。
片付けまでが調理練習の一環
調理練習で見落としがちな工程に〝後片付け〟があります。特に訪問リハビリで調理練習を実施する場合、後片付けの時間も含めてリハビリ時間内で完了させる必要があります。
食器洗いから生ゴミの捨て方まで、調理を実用的な活動として実施していくためには欠かすことができない要素のひとつです。
そのため、実際に訪問リハビリで調理練習を行う場合には、料理を作る日と片付けを行う日を分けたり、全てが時間内で完了する〝味噌汁〟や〝カレー〟など、煮込む時間を利用して他の作業を行うことができる献立がオススメです。
作れることより食べられることを優先する
料理ができなければ食事が食べられないというわけではないため、はじめはレトルト食品やお惣菜をうまく取り入れていく方法も有効です。
特に最近ではコンビニでも本格的な食材が販売されていたり、料理に必要な全ての食材がひとまとめになってフライパンで炒めるだけという調理セットも充実してきています。
まずは自宅で食事ができる方法を考え、そこから少しずつ実用的な手段へと段階付していくことも訪問リハビリで行う調理練習の強みだと思います。
まとめ
訪問リハビリで調理練習を行う時の注意点は、
⑴まずは怪我をしないよう調理過程と利用者さんの能力をしっかりと評価する。
⑵食材の用意から後片付けまでを調理活動の一環と捉えることで、より実用的な練習になる。
⑶便利な調理キッドやお惣菜の一部を活用するなど、食べられることを最優先に取り組む。
コメント