8050問題と訪問リハビリテーション

気づいたこと

関係ないようで関係ある話

最近、テレビや新聞でよく取り上げられている〝8050問題〟というのをご存知でしょうか。

正直なところ、私はこのニュースを聞くまではどんな問題なのかまったく把握していませんでした。

どんな内容かというと、80代の親御さんの収入で生活をする50代の子供が急増しているという点がクローズアップされています。

この〝8050問題〟というものをよく調べてみると、将来理学療法士や作業療法士など医療・福祉分野で働く私たちにも大きな影響を与えかねない関係があることも見えてきました。

8050問題とは

読み方は〝はっせんごじゅう〟ではなく〝はちぜろごーぜろ〟と読みます。

内閣府の調査によると、中高年(40歳〜64歳)を対象に調査をしたところ、ひきこもり状態にある人が全国に61万3000人もいることがわかったそうです。

この調査でいう〝ひきこもり〟とは、家族以外の人と交流する機会がなく、自室から出ない暮らしや、外出はコンビニだけという生活が半年以上続ている状態を定義しています。

さらに詳しくみていくと全体の4分の3が男性で、退職をきっかけにひきこもりになってしまったケースが最も多いようです。また、就職氷河期を経験していることも背景にあると言われています。

また、ひきこもりの期間は〝7年以上〟が半数以上を占めており、そのうちの3分の1は高齢の親に経済的に依存していることもわかってきました。 

最近のニュースでも親が亡くなり年金の支給が終了してしまったため、同居していた息子さんが食事も取れずに餓死してしまう痛ましい事態も発生しています。

利用者さんの中にも

訪問リハビリを利用されている方の中にも、こうした事態に直面されている方と出会う機会も増えてきたように思います。

ある利用者さんは、独身の息子さんと同居しているのですが、利用者さんの介護を理由に定職に就かないまま過ごされてきたそうです。そのため、介護はしてもらえるものの収入源がなく、利用者さんの年金で生計を立てているとのことでした。

また、ケアマネジャーさんに聞いた話では、介護保険サービスの増回や継続が困難となるケースの中にも、仕事をしていない子供と同居されているなどの家庭環境が原因となっていることも多いようです。

地域で支えるとは

このような問題に対して〝地域や福祉で支えていきましょう〟という方針が打ち出されているようですが、実際にどんなことができるのでしょうか。

リハビリでも〝地域包括ケアシステム〟というキーワードをもとに〝自助・互助・共助〟といった言葉も耳に入ってくるようになりました。

私個人でも協会主催の研修会に参加したことがあるのですが、その場ではわかったような気になるのですが、結局のところよくわかっていないというのが正直な感想です。

そこで8050問題の対策を具体的に提示しているものを調べたところ、やはり同居されている子供さんに自立してもらうほかないようです。

同居する中高年の子供に自立してもらうには

子供に自立してもらうための方法案としては、光熱費の名義を子供に変更しておく、炊飯器の使い方を習得してもらう、親が旅行に出かけてみるといった案が挙げられていました。

水道光熱費の名義変更を勧める理由は、支払い者の親が亡くなった場合、口座の凍結によりライフラインがストップしてしまう事態を避けるためのようです。

炊飯器の使い方については、最低限ご飯だけでも炊けるようにしておくということのようですが、〝さすがにこれは誰でもできるでしょ〟と高をくくらずにやってもらうことが大切のようです。

最後に親の旅行というのがもっとも有効らしく、一時的にひとり暮らし状態を作ることがよいのだそうです。

そうすることで、実際に親がいなくなった環境でも生きていけるだけの生活力を身につけてもらうことが狙いのようです。

なんだか作業療法士が本領を発揮できそうな分野に感じてきます。

あまり考えたくはないですが、将来、利用者さんのリハビリに行ったつもりが、同居している息子さんの生活力をつけるリハビリを依頼される時代が来るかも知れません。

まとめ

8050問題について調べてみたところ

⑴親のお金で生活している中高年が増えてきている。

⑵それが原因で経済的に困窮してしまうケースが増えている。

⑶この問題を解決に導くカギは、ひきこもりの子供に生活力をつけてもらうこと。


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