多くの方が誤った使い方をしている
訪問リハビリで伺う利用者さんのお宅には、必ずと言っていいほど福祉用具が導入されています。電動ベッドから車椅子、据え置き手すり、ポータブルトイレまで用途によって様々です。
福祉用具の導入については、退院後すぐの介入であれば比較的選定に携われる余地が残されていますが、すでに導入が完了してしまっているケースや、退院前家屋評価で病院のセラピストが導入を決定済みの場合もあります。
後者の場合、利用者さん自身で福祉用具の使い方を変更されていたり、誤った用途で使用しているというケースが存在しているかもしれません。
みなさんがお会いした利用者さんの中にも〝福祉用具の使用方法〟について気になったことはないでしょうか。些細なことに思えるかもしれませんが、それがきっかけで大事故に至ってしまうケースもあるので注意が必要です。
介助バー
電動ベッドを導入されている方に多く併用されている可動式の手すりです。私が勤務していた病院では〝介助バー〟と呼んでいました。
この福祉用具の便利な点は、縦でロックをするとベッド柵になり、90度の位置でロックをすると手すりとして利用できることです。
立ち上がりの安定性が低下されている方や一部介助を要する方が使用することで円滑な動作をサポートしてくれます。
ただひとつだけ注意点があります。それは〝ロックをしていない状態〟で放置しているケースです。
ロックを掛けるストッパーを外したままにしておくと、いざという時手を伸ばした手すりが可動してしまい、転倒事故を招きかねません。
ロックを掛けずに使用している利用者さんには小まめに声かけをしていくことが大切です。
オーバーテーブル
オーバーテーブルとは、ベッドの横切る形で設置することができるコの字型のテーブルです。病室に行くと食事やコップが置かれているのをよく目にすると思います。
本来の用途はベッドと併用して使用するものですが、キャスターが付いているため可動性が高く、〝移動できるテーブル〟として使用されている方も多くいらっしゃいます。
こちらのオーバーテーブルも使用する際に注意点があります。介助バーと同様、手すり感覚で使用した際にテーブルが動いてしまい転倒事故に繋がる恐れがあります。
普通の四つ脚テーブルとは異なり〝コの字型〟の形状に加えてキャスターも付いているため、体重を掛けると勢いよく動いてしまいます。
こちらも移動しない時はしっかりとロックをして使用するようお伝えするようにしています。
円座クッション
褥瘡がある方に円座クッションを使用しているケースは多くあります。特に車椅子の座面に使用している方が意外と多いことに驚きます。
円座クッションに関してはそれぞれの立場に応じて賛否両論が繰り広げられていますが、私が知っている知識の範囲ではあまり使用はおすすめできません。
本来の用途は〝痔〟で悩む方が使用する目的だったと思いますが、いつからか褥瘡部位を免荷する目的で使用されるようになったようです。福祉用具のカタログに掲載されている以上、使用したくなってしまう気持ちもわかりますが誤った使い方は逆効果です。
車椅子を利用されている方が円座クッションを使用すると、逆に体幹のバランスを崩して座位姿勢が悪化します。結果的に別の箇所に圧が集中してしまい褥瘡の悪循環に陥ってしまうので注意が必要です。
使っている期間が長いほど使用方法を変更しづらい
福祉用具の使用方法を誤っている方に対して、十分な関係性が築かれる前に注意や訂正をしてしまうと利用者さんによっては嫌われてしまう場合があります。
また、使用期間が長ければ長いほど、利用者さんが使いやすいようにカスタマイズされた福祉用具の用途を変更することは難しくなっていきます。
福祉用具の導入が検討されている時点で介入できることが理想的なタイミングだと思います。
まとめ
誤った福祉用具の使い方をされている利用者さんに対しては
⑴ロックやブレーキの掛け忘れには面倒でも毎回伝えるようにする。
⑵車椅子の方や褥瘡がある方が円座クッションを使用していたら要注意。
⑶福祉用具の導入が検討されている時点で顔を出せるように準備しておく。
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