住宅改修や福祉用具導入の失敗例

気づいたこと

退院前家屋評価の難しさ

私が病院に勤務をしていた頃、回復期病棟から退院される患者さんの多くは〝退院前家屋評価〟というものを実施していました。

自宅に退院することが決まった患者さんのお宅に、看護師、療法士、ソーシャルワーカー、工務店の方が集い生活動線の確認や必要な家屋回収の箇所、福祉用具の選定を行います。

当日は患者さんも外出または外泊の手続きをしているため、共に協力をしてもらいながら実施します。

この退院前家屋評価に要する時間は60分から90分ほどで、その間にすべての評価を終わらせなければいけません。そのため、実際に訪問リハビリの分野に出てみると退院前評価でイメージしていた生活像とはかなり違う暮らしをされている利用者さんにも出会うことがあります。

ピックアップ型歩行器を導入したら

パーキンソン病で歩行時のふらつきが気になっていたという利用者さんが、リハビリ病院を退院される際にピックアップ型歩行器の導入を勧められました。ちょうど病院で使用していたものと同じモデルが借りられるということもあり安心して導入を決めたそうです。

しかし、退院をしてから実際に使用してみたところ、ピックアップ型歩行器を持ち上げる動作が負担となり肩関節周囲に炎症を起こしてしまいました。

結局それ以降は歩行器として使用されることはなく、ベッドサイドのタオルかけとして第二の役割を担うようになっていました。レンタル料金が掛かっていることを伝えても返品には至らなかったことから、よほどタオルかけとしての使い勝手がよかったのでしょうか。

廊下に手すりを取り付けたら

私が訪問リハビリでお伺いした利用者さんで、廊下に取り付けた手すりを取り外すことになった方がいました。

この利用者さんも入院時に退院前家屋評価を実施してもらい、自宅の廊下両サイドに手すりを取り付けることのなったそうです。幸い廊下の幅も狭く平行棒の要領で利用しようと提案されたようでした。

退院後しばらくは手すりを使ってトイレまで移動できていたのですが、一週間ほどである問題が発生しました。なんと〝体格のよいご家族がスムーズに通れない〟ことが判明したのです。これでは手すりを外すしかありません。

家屋評価の段階から、ご家族の利便性にも配慮した住宅改修の視点が必要だというお手本のような出来事でした。

寝室に平行棒を導入したら

こちらも訪問リハビリで伺った利用者さんとの出来事です。ベッドからドアまでの最短距離の動線上に〝平行棒〟を導入したケースがありました。リハビリ室に置いてあるようながっしりしたものではなく、少し軽量化されたものでした。

平行棒を自宅用でレンタルできることにも驚きですが、こちらの福祉用具導入の判断も退院前家屋評価でセラピストが提案してくれたことにも驚きました。

平行棒は問題なく利用できていたのですが、同居するご家族が掃除や片づけをする際に動線を妨げてしまうことが多かったため、すぐに返却される運びとなりました。

住環境の整備に必要は視点

上記した出来事を踏まえると、住宅改修や福祉用具の導入にあたっては〝利用者さんと家族が便利に使えること〟と〝利用者さんが納得して使えること〟が大切な視点になると思います。特に住宅改修費は失敗をしても簡単にやり直すことができません。

また、利用者さんの利便性向上と引き換えに家族が不便を被るのはよい住環境整備とは言えず、利用者さん自身が必要性を感じていないものを無理に導入しても活用されることはありません。

〝病院でも使っていたから〟〝これがセオリーだから〟という視点ではなく、しっかりと利用者さんの〝その後〟をイメージして介入していきたいものです。

まとめ

住宅改修や福祉用具を導入する時は

⑴利用者さんが利用を納得しているかしっかりと確認する。

⑵利用者さんだけではなく、利用者さんの家族の利便性も考える。

⑶レンタル品は返すことができるが、改修費は取り戻せないので慎重に。

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