訪問歯科と訪問リハビリテーション

訪問リハのこと

身近になった訪問歯科

私が訪問リハビリの分野で仕事をするようになってから〝訪問歯科〟を利用される方が多くいることに驚きました。本来の歯科治療は歯医者さんに出向き、専用の治療器具を使用しなければ出来ないものと思い込んでいたのですが、携帯できる歯科治療機材があるんです。

たまたまリハビリ前に訪問歯科を受けていた利用者さんの様子を見学させてもらったことがありますが、携帯用の歯科治療器具は、アタッシュケースのような箱に機材が格納されており、コンセントから電源を取るだけで治療できるようになっていました。

また、歯科治療用に使用する車椅子も用意されており、ティルト型の車椅子のように背もたれと座面が連動して角度調整ができる仕様になっています。

ちなみに、歯医者さんで見かける可動式の眩しいライトは使用されておらず、携帯用機材の中にLEDライトも用意されておりそれを使って口腔内を照らしていました。

歯科治療とリハビリの深い関係

リハビリはもとより、体力をつけるにも褥瘡を治すにも、基本となるは〝栄養〟です。どれだけ運動してもしっかりとした栄養が摂れていなければ意味がありません。

その栄養をしっかりと取るための食事に欠かせないのが〝歯〟の健康です。高齢者のなかには義歯を使用されている方が多くいるとは思いますが、歯茎が痩せてしまうと途端に噛み合わせが悪くなってしまったり、違和感から使用しなくなってしまうというケースも少なくありません。

リハビリの効果を高めるには栄養が大事です。栄養を摂るには食事が大事です。食事を摂るには歯が大事というわけです。こうしてみると、間接的ではありますが訪問歯科とリハビリには深い関係があるように思えてきます。

義歯の治療により寝たきりから歩行が自立に至った事例

私が担当させていただいた方の中に、下肢の骨折と関節症により寝たきりとなっている利用者さんがいました。介入直後より食事も十分に摂取できていないことを知り、原因は義歯の不適合によるものでした。

当然ですが歯科に通院できる状態ではなかったため、ケアマネジャーさんを通じて訪問歯科の先生を紹介してもらうことになりました。そして訪問歯科による治療を受け始めて一ヶ月半。義歯の調整が終わることになると、利用者さんの動きにも変化が見られるようになりました。

動作時にしっかりと歯を食いしばることができるようになり、起居動作、立位保持の動作負担が軽減されていきました。また、噛み合わせもよくなり食事もしっかりと摂取できるようになり、歯科の治療後から半年ほどで屋内歩行が自立されるようになったのです。

歯科治療により二階に上がれるようになった事例

ある利用者さんは、二階にある自分の部屋で寝られるようになりたいという思いから、訪問リハビリを頑張っていました。この方も義歯を作ってはいたのですがうまくフィットせず、長年使用しないまま生活されていました。

そこでもちょうど歯科治療の話題が上がり、訪問歯科を利用されるようになりました。すると歯を食いしばることで今まで以上に強い力が発揮できるようになり、念願だった二階の寝室で寝起きすることができるようになりました。

最近の訪問歯科事情

最近、訪問歯科の大切さがクローズアップされるようになってきています。まだまだ訪問歯科を実施している医療機関は少ないようですが、診療報酬の改定によって訪問歯科の加算が設けられるなど、少しずつ高齢者の方々が利用しやすい環境も整いつつあります。

リハビリテーションの手技にこだわることも大切かもしれませんが、まずはリハビリの頑張りを無駄なく結果に転化できるよう、食事、影響管理、歯の状態について評価してみることをお勧めします。

まとめ

リハビリの効果を追求するのであれば、まずは歯科から。

⑴しっかりと栄養を摂ることが大事

⑵しっかりと栄養を摂るには食事が大事

⑶しっかりと食事を摂るには歯が大事

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