訪問リハビリと車椅子
私が病院で勤務をしていた頃、多くの利用者さんが車椅子を利用されていました。疾患によって車椅子を利用する理由はひとそれぞれですが、車椅子を利用されている方のほとんどが、移動、食事、テレビ鑑賞と多様な使い方をしていたように思います。
ちなみに、私が勤務していたリハビリ病院では、利用者さんが使用する車椅子の選定は、理学療法士が行っていました。選ぶ理学療法士が新人でもベテランでも、車椅子を選定するスキルがあってもなくても、患者さんを担当する理学療法士が車椅子を選び、使用することになっていました。
一方、訪問リハビリの分野に出てみると、車椅子を選ぶ時はケアマネジャーさん、利用者さん、ご家族の中で発言力の強い方の意見が通ることが多いです。もちろん、担当のリハビリスタッフに相談をしてもらえることもあるのですが。
一日中車椅子に座っている
これは、車椅子を導入する際に注意をしておきたい一番重要な部分です。車椅子を利用する〝目的〟が明確になっているか確認をする必要があります。
例えば、歩行が不安定で車椅子を導入するのであれば目的は〝移動〟です。食事の際によい姿勢を保つために車椅子を導入するのであれば〝食事〟、ゆっくりテレビを見たいのであれば〝休息〟といった具合に車椅子を利用する目的は様々です。
この部分が明確になっていないと、移動の目的で導入された車椅子に一日中座っているという事態が発生してしまいます。利用者さんの目的にあった車椅子を導入するのが基本です。それを理解せずに標準型の車椅子で一日過ごしてしまうなんてことは避けなければいけません。
滑り止めシートを使う
車椅子に長時間座っているとお尻がずり落ちそうになっている人がいたら、滑り止めシートを使いたくなってしまいますが、これも注意をしたほうがよい点です。
お尻がずり落ちそうになっているのは、利用者さんの身体機能と車椅子が合っていないことが原因だからです。これを無視して滑り止めシートを臀部に敷いてしまうと、お尻の皮膚が過度に伸長されて皮膚トラブルのきっかけを招いてしまいます。
ずり落ちてしまうのは利用者さんが悪いのではなく、利用者さんの身体機能に合っていない車椅子が原因ということを理解しておく必要があります。
フットサポートのかかと部分にマジックテープのストッパーがついている
これは、車椅子に乗っている際にフットサポートから足が落ちないように標準装備されている、栗いナイロン生地の例のものです。一見足が落ちないため便利な装置かと思いがちですが、そうではありません。
下肢の筋肉が短縮しているようなケースでは、足止めにより膝の屈曲が制限されてしまい結果的に臀部がずり落ちてしまう方向に力が働いてしまいます。そこで臀部に滑り止めシートを敷いてしまったら、これだけで車椅子の上に拘束された利用者さんが誕生してしまいます。
万が一利用者さんがこうした車椅子を利用していたら、迷わず外してあげたほうがよいと思います。
タイミングも重要
訪問リハビリの現場では、介入したらすで車椅子が導入されていることもあります。一度利用者さんが愛用した車椅子を別のもに取り替えるという作業は思ったよりも円滑に進まないものです。
ただ、少しずつ関係性が築かれるなかで様子をみながら伝えていかなければいけません。決して悪気があって導入されたわけではないため伝えにくい部分ではありますが、勇気を振り絞る必要があります。
訪問リハビリで利用者さんに適した車椅子を導入することは簡単なことではありませんが、ひとつひとつ根気強く進めていく必要があると思います。
いずれにしても訪問リハビリに限らず、車椅子シーティングの知識と技術が少しくらいあると重宝すると思います。
まとめ
訪問リハビリで車椅子を利用する時は
⑴利用する目的を明確にして、その目的にあった車椅子を選ぶ。
⑵滑り止めシートやフットサポートのかかとガードは絶対に使用しない。
⑶伝えにくいことでも、少しずつ根気よく良い方向へ導く努力が大事。
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