家族の介護力をあてにし過ぎてはいけない

訪問リハのこと

病院に勤めていた頃の自分

訪問看護ステーションで仕事をしていると、新規に利用開始される方の情報の中に看護サマリーやリハサマリーが添えられていることがあります。特にリハビリのサマリーはよく目を通させてもらっていますが、まれに生活動作場面で気になる表記を目にすることがあります。

それは、家族の介護力をあてにした予後予測の文言です。〝家族が〇〇の部分を介助することで〟といった感じで、生活動作の中に家族の介護力が組み込まてしまっているのです。実はこれ、私も病院に勤めていた頃によくやっていたことで、よく上司に指導されていたことなのですが、実際に自分が訪問に出てみるとよくわかります。

介護保険は家族の保険でもある

院内でリハビリをしていた頃には〝退院後の在宅生活〟をうまくイメージできずに安易に家族の介護力に期待をしていました。しかし、実際に退院後の在宅生活を目の当たりにすると、家族にも自分の生活があり、買い物や趣味活動の時間があったり、介護をしたくないという人がいるのが現実です。

要介護状態になった場合、周囲に迷惑が掛からないようにするための〝介護の保険〟のはずが、そのサービスを提供しているセラピストが家族の介護力に頼ってしまうのは少し違う気がします。

セラピストが利用者さんの在宅生活をイメージする場合、できる限り家族の介護力には頼らずに解決できる方法を見いだすことが必要なのではないでしょうか。

靴下を履くのに要する時間

よくあるエピソードですが、寝たきりの患者さんが入院中に一生懸命リハビリを頑張った結果、見守りがあればベッドに腰掛けて5分くらい時間を掛けて靴下を履くことができるようになり、セラピストとしては〝ここまでよくなったのは素晴らしい、あとは家に帰ってもできることは自分でやってくださいね〟と気分良く送り出します。

しかし、実際に家に帰ってみると、この5分間の見守り時間も介護負担だったりします。手伝えば20秒も掛からずに終わり、残りの時間に家事をこなすことができてしまう訳です。

一部介助から見守りでできるようになって一番喜んでいるのは、意外とセラピストだったりするのかも知れません。家族からしてみれば自立以外は介護していることには変わりないということを知っておいて損はないと思います。

訪問リハビリでできる家族のケア

退院後の生活環境や家族構成にもよりますが、少なからず介護をする家族の視点にたってアプローチをしていくスキルが求められます。病院のリハビリとは担う役割が違っているわけですから、その分セラピスト自身も関わり方を柔軟にしていく必要があります。

具体的には、家族が利用者さんと暮らすようになって困っていること、ストレスの程度などを中心に、時には愚痴を聞く時間を設けるなど、ご家族の負担軽減を図る取り組みが挙げられます。

また、無理をしてやらなくてもよいこと、逆に手伝うことで時間的な拘束から解放される場面について、状況に応じて伝えていくことが大切です。家族がギブアップしてしまえば、利用者さんも自宅では暮らせなくなってしまうことを踏まえ先回りした接し方が大切です。

まとめ

家族の介護力の期待をするのではなく

⑴介護保険は家族の介護負担を減らすための保険でもある

⑵見守りでも一部介助でも、自立以外は介護に要する時間は大差はない

⑶家族のケアができるのは、訪問リハビリの担当者が適任である

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