似ているようで違うもの
一般的に〝リハビリテーション〟といえば、リハビリ室で平行棒を使った歩行練習や、プラットホーム上で手技を施されている場面をイメージされる方が大半かと思います。一方で〝訪問リハビリ〟という言葉から、具体的にその場面をイメージできる人はかなり少ない数になるのではないでしょうか。
利用者さんやご家族はもとより、セラピスト自身もその限りではありません。ケアマネジャーさんに至っては理学療法士と作業療法士の違いさえ十分に認知されていないのが現状です。訪問リハビリと院内リハビリの違いはどこにあるのでしょうか。
介入機会の差からみえてくるもの
入院中に行われるリハビリに関しては、回復期にあたる期間で1日3時間、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士で時間を分割して介入します。最近では365日リハビリを行いましょうというコンセプトで、土日祝日も休みなく実施してくれる病院も多く存在します。おおよそ一週間で15〜18時間位はリハビリを受けることができるということになります。
介護保険を使って訪問リハビリを利用する場合、一週間に2時間までという制限があります。一回1時間の介入であれば週に2回しかリハビリをすることができません。つまり、リハビリをしていない6日と22時間をどのように過ごしてもらえるかという視点をもった介入が必要不可欠になります。ちなみに医療保険を使用した場合には介入の上限は設けられていませんが、さすがに毎日利用できているという人は少ないのではないでしょうか。
リハビリの目的にも大きな違いがある
院内のリハビリでは、一通りの設備や道具が揃っています。理学療法室であれば、プラットホームをはじめ平行棒や起立台、低周波治療器、作業療法室であればお手玉や輪投げ、手工芸の道具といったところでしょうか。これらを活用しながら機能面、能力面の回復を図るべくアプローチしていくことになります。
訪問リハビリでは大掛かりな用具は持ち運ぶことはできません。リハビリ器具に頼らない練習内容を考える必要があります。また、入院中にひと通りリハビリを受けた後に自宅で行うリハビリは、介入する目的も大きく違ってきます。自宅という環境だからこそ明確になる〝課題〟や〝目標〟に向けてリハビリを行うことが望ましく、お宅に伺っているのにストレッチや関節可動域練習、筋力練習だけのいわゆる〝出前リハ〟では、自宅でリハビリをするメリットを活かしきることができません。
リスク管理に対する意識は最大限に
病院でリハビリを行う場合、リハビリ室であれば同僚や上司が近くにいます。ベッドサイドや病棟で行うリハビリであれば、看護師さんが近くにいます。もし、万が一容体が急変してしまったり、転倒してしまったという場合には医者や看護師がすぐに駆けつけ、適切な処置を施してくれます。だから少しリスクを伴うリハビリ内容であっても、安心して行うことができるわけです。
訪問リハビリでは、基本的に独りです。家族が同居されている場合もありますが、なにかトラブルがあった場合には自分が主導となって行動しなければいけません。そのため、日頃から所属先の看護師さんと密に連携が取れる準備をするとともに、訪問先から主治医の指示を仰げるよう、連絡先を携帯しておく位の準備はしておいたほうが安心してリハビリを行うことができます。
まとめ
訪問リハビリと院内リハビリの違いは
⑴介入機会が少ない分、それ以外の時間をコーディネートする必要がある
⑵リハビリの内容は〝出前リハ〟ではなく自宅ならではの環境を活用する
⑶リスク管理に対する意識を高め、緊急事態の対処法をイメージしておく
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